連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク 第74回 いつまでに修正申告をすれば加算税が課されない?
いつまでに修正申告をすれば加算税が課されない?
Q.先日、税務署から当社に対し×1年3月期から×3年3月期までの法人税と消費税に関する調査を行う旨の事前通知がありました。そこで、事前に社内で×1年3月期から×3年3月期の申告内容を確認してみたところ、×3年3月期に計上すべきであった費用が×2年3月期に計上されており、×2年3月期の法人税が過少申告になっていることが明らかとなったのですが、これから修正申告書を提出しても過少申告加算税が課されてしまうのでしょうか。
A.更正がされることについて客観的に相当程度の確実性がある程度に達しているとは言えませんので、速やかに修正申告書を提出すれば、その修正申告書の提出は「更正があるべきことを予知してされたものでない」として、過少申告加算税は課されないものと考えられます。
(解説)
修正申告書の提出があった場合には、原則として過少申告加算税が課されることになります(国税通則法65条1項)が、納税者の自発的な修正申告を奨励するため、修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないときは、過少申告加算税が課されないこととされています(同法65条5項)。
どのような場合に「更正があるべきことを予知してされたものでない」と認められるのかについては争いがありますが、裁判例では、税務署員が申告に係る国税についての調査に着手し、その申告が不適正であることを発見するに足りるか又はその端緒となる資料を発見して、これによりその後調査が進行して先の申告が不適正で申告漏れの存することが発覚し更正に至るであろうことが客観的に相当程度の確実性をもって認められる段階に達した後に、納税者がやがて更正に至るべきことを認識した上で修正申告を決意して修正申告書を提出したものでないことをいうものとされています(東京高裁平成7年11月27日判決等)。
また、国税庁の事務運営指針では、「その法人に対する臨場調査、その法人の取引先の反面調査又はその法人の申告書の内容を検討した上での非違事項の指摘等により、当該法人が調査のあったことを了知したと認められた後に修正申告書が提出された場合の当該修正申告書の提出は、原則として、同項に規定する『更正があるべきことを予知してされたもの』に該当する。」「臨場のための日時の連絡を行った段階で修正申告書が提出された場合には、原則として『更正があるべきことを予知してされたもの』に該当しない。」と定められており、上記の裁判例に近い考え方が採られているものと思われます。
この点、本件のような費用の前倒し計上による過少申告は、一般的には実地の調査をしなければ発見することが困難であり、事前通知を受けただけであれば、更正に至るであろうことが客観的に相当程度の確実性をもって認められる段階に達しているとは言えませんので、速やかに修正申告書を提出すれば、その修正申告書の提出は「更正があるべきことを予知してされたものでない」として、過少申告加算税は課されないものと考えられます。
なお、増加償却の届出書を提出していなかったにもかかわらず増加償却の特例を適用して法人税の申告をしていた納税者が、国税局の調査担当者が実地の調査に着手した後に、修正申告書を提出したという事案において、調査担当者がそれまでに増加償却の適用要件が充足されているか否かに関する調査を行っていなかったことなどから、届出書の不提出が発見されるであろうことが客観的に相当程度の確実性をもって認められる段階にあったとは認められないとして、修正申告書の提出を「更正があるべきことを予知してされたものでない」と認めた裁判例もあり(東京地裁平成24年9月25日判決)、実地の調査に着手された後であっても、調査の進捗状況によっては、「更正があるべきことを予知してされたものでない」と認められる余地はありますので、過少申告の疑いを自ら発見した場合には、修正申告をすべきか否かについて迅速に検討することが必要となります。
鳥飼総合法律事務所 弁護士 瀧谷耕二
※ 本記事の内容は、平成27年3月末現在の法令等に基づいています。
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