連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク 第52回 甘く見てはいけない印紙税
甘く見てはいけない印紙税
Q: 税務調査において、印紙税で思いもよらぬ多額の課税を受けることがあると聞いたことがあります。しかし、契約書などに貼る印紙の一つ一つがそれほど大きくはないので、何となく想像がつきません。どうしてそのようなことになるのか教えてもらえますか?
A: 会社(文書作成者)においては、印紙税法上の課税文書(請負契約書、消費貸借契約書、金銭の受取書など)に当たらないという認識で、その文書を過去何年にも亘って大量に作成しているケースがあります。それが税務調査において、会社の認識とは異なり、印紙税法上の課税文書に該当すると指摘されるケースがあります。
印紙税の追徴は5年間遡ることができます。また、印紙を貼っていないかった文書については、基本的には当初貼るべき印紙代の3倍の金額の過怠税(納付しなかった税額とその2倍に相当する金額の合計額※)が求められます。
※ 1.1倍の金額の過怠税(納付しなかった税額とその10%の金額の合計額)で済むケースもあります。
会社において当初から印紙税がかかるという認識をしていれば、その文書の作成について工夫をしていたのでしょうが、会社において印紙税がかかるという認識がありませんでしたから、過去何年にも亘って無造作に大量に作成しているケースがあります。会社の取引規模が大きければ作成される文書も多くなるでしょうから、実際にも数千万円、数億円の追徴の指摘がされたケースがあります。
[解説]
会社(文書作成者)側に印紙税についての理解が不足していたために、税務調査において、会社の認識にかかわらず課税文書に該当すると指摘されるケースがありますので、注意が必要です。
印紙税は、文書を課税対象とするものであり、いわゆる文書課税と呼ばれています。したがって、課税文書に該当するかどうかは、その文書に表されている事項に基づいて判断することとなり、その文書に表されていない事項は、原則として判断の要素にとり入れないことになります。また、文書の全体を一つとして判断するのみでなく、その文書に記載されている個々の内容についても判断するものとし、また、単に文書の名称又は呼称及び形式的な記載文言によることなく、その記載文言の実質的な意義に基づいて判断することになります。
このように、印紙税は、文書の記載内容によって判断されますから、作成者の意図にかかわらず、その記載内容(例えそれが文書中の一部分に過ぎないものであったとしても)が、印税法上の課税事項に当たるということになれば、当該文書は課税文書であるという指摘がなされます。
文書については思いもよらない印紙税の課税を受けるケースがありますので、その作成にあたっては、印税法上の課税文書に当たるか否かのチェックも忘れずに行う必要があります。文書の作成目的からして、そもそも印税法上の課税事項に当たるようなものを記載する必要がないのでしたら、そのようなものは文書に記載しないなど、作成段階でしっかりと検討することが肝要です。
鳥飼総合法律事務所 税理士 佐野 幸雄
※ 本記事の内容は、平成26年3月末現在の法令等及び税制改正大綱に基づいています。
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