連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク 第50回 出国税って、どういう税金?

出国税って、どういう税金?

 

Q 「出国税」といわれる税金が新たに設けられると聞きました。「出国税」とはどういう税金なのですか。また、いつ導入されるのですか。

 

A 「出国税」とは、株式等の金融資産の保有者が、日本の居住者から非居住者になる時点で、その金融資産の含み益に対し、課税する措置をいいます。平成27年度の税制改正で導入される可能性があります。

 

出国税とは、株式等の金融資産の保有者が、日本の居住者から非居住者になる時点(出国の時点)で、その含み益に対し、課税する措置をいいます。日本に支店等を有しない非居住者が、株式等を譲渡した場合であっても、原則として、課税されません。香港やシンガポールでは、そもそも、株式等の譲渡益に対しては、原則として、課税されませんから、日本の居住者が、税負担を軽減する目的で、これらの国(地域)の居住者となった上で、含み益のある株式を譲渡することによって、大幅に税負担を軽減するという例もあるようです。

 日本以外の国では、税負担の軽減を目的とした出国に対する対抗策として、居住者から非居住者になる時点(出国の時点)で、含み益に対して課税する措置が、講じられています。例えば、ドイツでは、非居住者となった時点で、1社について1%を超える株式の含み益に対して課税する措置が採られており、アメリカ、フランス、カナダ、オーストラリアなども、対象となる資産の範囲等について、多少の違いはあれ、同様の措置を講じています。

 日本でも、現在(平成26年11月14日)、こうした諸外国の例を参考に、同様の措置を講じるべきかが検討されています。平成26年10月21日の政府税調基礎問題小委員会では、「諸外国の例を参考に我が国における対応を検討」するとされ、各種報道では、平成27年度の税制改正において、導入される可能性が高いのではないか、といわれています。ただ、①課税の対象となる資産の範囲(株式等以外の金融資産も対象となるのか)・規模(1億円超という報道もあります)、②延納制度や納税猶予制度の内容など、制度の詳細は、明らかになっていません。もし、出国税が導入されれば、含み益を有する株式等を保有する者にとっては、重大な影響が及びうるだけに、今後の立法の動向を見守る必要がありそうです。

鳥飼総合法律事務所

※ 本記事の内容は、平成26年3月末現在の法令等及び税制改正大綱に基づいています。

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