連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク 第49回 税務調査で、「社長の個人の通帳も見せてほしい」と言われました
Q 税務調査で、「社長の個人の通帳も見せてほしい」と言われましたが、見せる必要があるのでしょうか?
A 法人税の調査に来ているのであれば、一般的には見せる必要はないと考えられます。
そもそも、なぜ税務調査が出来るのか、考えてみたことはあるでしょうか。もし、やってきた人がただの見ず知らずの人であれば、「会計書類を見せてください」と言われたとしても、応じる会社はまずないでしょう。この違いは、調査官には、法律に基づいて調査する権限を与えられているため生まれるものです。逆に言えば、法律上の権限がなければ、応じる必要はないのです。単なる業務妨害に過ぎません。
では、調査官に与えられている法律上の権限について見てみましょう。国税通則法という法律に、その根拠となる条文があります(国税通則法の74条の2~74条の8)。たとえば法人税の調査であれば、「税務署の職員等」が、「必要があるとき」「法人」や「法人と取引関係等にある者」に対して「質問し、事業に関する帳簿書類その他の物件の提示もしくは提出」を求めることができる、と定められています(注:ここでは、概略をお伝えするため、法律上の正確な表現は用いていません。正確な内容は国税通則法の74条の2等を参照してください。)。
ですから、法人税のみの調査で来ている調査官が、相続税の調査をすることはできませんし、会社と関係のない第三者に対して質問したりすることもできません。税務調査対応の第一歩として、まず何税の調査に来ているのかはしっかりと確認しましょう。
次に、調査の際の質問検査権がどのような場合に行使できるのかについて考えてみます。国税通則法では、「必要があるとき」と規定されています。これについては判例があり、「客観的な必要性」が必要なのですが、その必要性の判断を行うのは、「調査権限を有する職員」とされています。したがって、かなり広範囲にわたり調査権限が及ぶことになります。調査対象となる書類、つまり必要があると判断される書類は、提出しなければいけません。しかし、客観的に不必要であることが明らかなものは、提出する必要はありません。
したがって、法人税の調査であれば、社長個人の通帳で、会社と全く関係ない完全にプライベートなものは、通常客観的な必要性はない、と言えるでしょう。法人税の調査に、なぜその書類が必要なのか、一見して明らかでない書類については、調査の必要性について説明を求めるようにしましょう。提出を求められた資料をすべて出さなければいけないわけではないことには留意してください。
鳥飼総合法律事務所 弁護士 小西功朗
※ 本記事の内容は、平成26年3月末現在の法令等及び税制改正大綱に基づいています。
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