連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク 第39回 接待飲食費の処理
接待飲食費の処理
Q 当社は資本金の額が1億円を超える株式会社です。平成26年4月1日以後開始する事業年度において、会社が支出した飲食費の処理についての質問です。
(1)得意先担当者を招いてレストランで食事をし、1人あたり4000円かかりました。二次会では別の店へ行き、1人あたり8000円を支出しました。どこまで損金になりますか?
(2)先日、会社で同じ部署に属する部下数名を連れて居酒屋へ行きましたところ、進行中の案件に話題が及び、さながら社内会議の様そうでした。1人あたり7000円の支出ですが、損金になりますか?
A (それぞれ、少額飲食費については書類保存義務が満たされている前提で回答します。)
(1)レストランの分は「少額飲食費」として全額損金となります。二次会の分は金額オーバーで少額飲食費には該当しませんが、「接待飲食費」として、50%相当額が損金となります。
(2)仮に「会議費」に該当するなら全額損金となります(会議費には形式的な金額上限はありません。)。しかし、居酒屋は「通常会議を行う場所」とは言い難く、その支出を会議費として処理するのはかなり難しいでしょう。しかも、社内の方のみで飲食しているので「接待飲食費」にすら該当せず、結局、全額が損金不算入になるものと思われます。
(説明)
1.交際費等の扱い
これまで、原則としてその全額が損金不算入とされてきた「交際費等」の扱いが改正され、「交際費等」のうち「接待飲食費」については、平成26年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する各事業年度に支出するものについては、その50%相当額が損金算入されることになりました。 他方、従来通り、1人あたり5000円以下の少額飲食費については、一定の事項を記載した書類を保存していることを条件に「交際費等」の定義から除外され、損金算入が認められます。なお、中小法人では、従来からの定額控除(800万円)を選択することも可能とされています[i]。
大法人を前提とすれば、交際費周辺の税法上の扱いは以下のように整理されます。
(1)「交際費等」
① 接待飲食費 → 50%相当額につき損金算入 =交際費等のうち飲食その他これに類する行為のために要する費用(専ら当該法人の役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除く。)。 ② 接待飲食費以外の交際費等 → 損金算入 =交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの。 (2)「交際費等」から除外される項目 → 損金算入 ① 専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用 ② 少額飲食費(1人当たり5000円以下の飲食費) ※財務省令で定める書類(飲食の年月日、参加得意先等の氏名又は名称及びその関係、参加者数、店名と所在地等)を保存している場合に限り、適用。 ③ カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手拭いその他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用 ④ 会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用 ⑤ 新聞、雑誌等の出版物又は放送番組を編集するために行われる座談会その他記事の収集のために、又は放送のための取材に通常要する費用 |
上図は、税法の規定に沿った整理ですが、実務上は、まずは全額損金項目である(2)の①~⑤に該当するかを検討し、これらから漏れてしまった場合、(1)に従い、50%相当額の損金計上が可能な「接待飲食費」に該当するか否かを検討することになるでしょう。
2.少額飲食費((2)の②)
「交際費等」からの除外項目のうち、少額飲食費は、除外が認められるための要件として財務省令で定める書類(飲食の年月日、参加得意先等の氏名又は名称及びその関係、参加者数、店名と所在地等を記載)を保存するという要件が要求されているので注意が必要です。
また、その会社の役員、従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出したものは少額飲食費に該当しないとされていますので、会社外部の者が参加していなければならないといえます。 なお、1人当たり5000円以下か否かは、飲食した店ごとの判断となります。消費税については、税込経理をしている場合は税込価格が5000円以下か否かで判定し、税抜経理の場合は税抜価格で5000以下か否かを判定します(税抜経理の方が少し有利ですね。)。なお、1円でも5000円を超過すれば、その全額が少額飲食費に該当しないことになりますので注意が必要です。
3.会議費との相違((2)の④)
会議費について、通達は、「会議に際して社内又は通常会議を行う場所において通常供与される昼食の程度を超えない飲食物等の接待に要する費用」はこれに該当するとしています。また、会議費については、 1人当たりの費用の金額が5000円を超える場合でも適用があることを明示しています[ii]。
鳥飼総合法律事務所 弁護士 島村謙
[i]租税特別措置法61条の4、同施行令37条の5、同施行規則21条の18の4。
[ii]租税特別措置法関係通達61の4(1)-21。
※ 本記事の内容は、2014年4月現在の法令等に基づいています。
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