連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク 第38回 税務調査の事前通知に関する法改正
税務調査の事前通知に関する法改正
Q 税務調査の事前通知は,納税者と税務代理をお願いしている税理士の両者に送られることになっていたはずですが,平成26年度の税制改正で,この制度が改正されたと聞きました。どのように変わったのでしょうか。
A 平成26年7月1日以後に行う事前通知については,税務代理権限証書を税務署に提出している税理士・税理士法人(税務代理人)がおり,その税務代理権限証書に,事前通知が税務代理人に対して行われることに納税者が同意した旨が記載されている場合には,その税務代理人にのみ通知すれば足りることとされました。
(解説)
平成26年度の税制改正において,国税通則法を含む税法の一部が改正されました。この改正法は,平成26年3月20日に成立し,同年3月31日に公布されています。
この改正法で,国税通則法の税務調査の事前通知に関する規定が改正されました。
どのような改正かと言いますと,これまで,納税者が依頼する税務代理人がいる場合には,事前通知は,納税者と税務代理人の両者に通知することとされていたのが,改正によって,平成26年7月1日以後に行う事前通知から,税務代理権限証書に納税者の同意が記載されている場合には,税務代理人にのみ通知すれば足りるということになったのです。
つまり,平成26年7月1日以後に行われる事前通知からは,税務代理権限証書に,「納税者への事前通知は当該税務代理人に対して行われることに同意する」との記載がされていれば,課税庁は,税務代理人である税理士(税理士法人)にのみ通知を行う,ということです。
なお,課税庁は,平成26年7月1日以後に提出する税務代理権限証書の様式を改訂して,公表しています。
改正後の制度の主な注意点は,次のとおりです。
① 改正後の制度は,平成26年7月1日以後に行う事前通知から適用されます。ただ,平成26年6月30日以前でも,納税者の事前通知に関する同意を記載した税務代理権限証書を提出することはできます。
② 「納税者への事前通知は当該税務代理人に対して行われることに同意する」という記載は,法令上,税務署に提出する税務代理権限証書に記載することとなっています。そのため,(ア)税務代理権限証書ではない書面に同意する旨を記載する,(イ)納税者が書面ではなく口頭で同意する,などの法令の定めによらない方法では,有効な同意とは認められません。
③ この同意が記載されていない場合には,従前どおり,納税者と税務代理人の両者に事前通知が行われます。
上記のような注意点がありますので,税務代理を行う税理士(税理士法人)は,納税者に対してこの新しい制度の説明をし,納税者が調査の通知に関する同意をした場合には,その旨を確実に税務代理権限証書に記載することが必要です。
以上
鳥飼総合法律事務所 弁護士 佐藤香織
※ 本記事の内容は、2014年4月現在の法令等に基づいています。
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