連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク 第37回 租税条約に関する届出書はいつまでに提出しなければならない?
租税条約に関する届出書はいつまでに提出しなければならない?
Q 当社は、インドのソフトウェア会社A社に対して、ソフトウェアのライセンス料を支払っていましたが、その支払の際、源泉所得税を徴収していませんでした。この度、当社に税務調査が入ることになったので、社内の税務処理を点検したところ、この源泉徴収漏れが発覚しました。当社としては、できれば、今からでも租税条約に関する届出書を提出して、支払済みのライセンス料についても租税条約の規定に基づく軽減税率の適用を受けたいと考えています。このようなことは可能なのでしょうか。
A A社が作成した租税条約に関する届出書を貴社経由で提出すれば、支払済みのライセンス料についても、租税条約に規定する軽減税率の適用を受けることができます。
- 法律の規定
外国法人に対する源泉所得税の税率は、原則、20%です。ただし、租税条約に関する届出書を所轄の税務署長に提出すれば、租税条約に規定する軽減税率又は免税を受けることができます。
ご質問いただいた、租税条約に関する届出書の提出時期については、確かに、租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律の施行に関する省令には、「最初にその支払を受ける日の前日まで」に、当該届出書を提出しなければならないと規定されています。しかしながら、この時期に関する省令の規定は、軽減税率又は免税を受けるための効力要件ではないと解されています。そのため、「最初にその支払を受ける日の前日」の後に、当該届出書を提出しても、租税条約に規定する軽減税率又は免税を受けることができます。
2. 貴社の場合
貴社においても、A社から租税条約に関する届出書を受け取り、それを所轄の税務署長に提出すれば、日印租税条約に規定する10%の軽減税率の適用を受けることができます。
なお、租税条約に関する届出書は、支払を受けるA社が作成することとなっており、貴社のみで作成することはできません。したがって、日印租税条約に規定する軽減税率の適用を受けるためには、A社の協力が必要ですが、A社との取引関係が終了している場合には、協力が得られない場合があるので注意が必要です。
鳥飼総合法律事務所 弁護士 石井亮
※ 本記事の内容は、2014年4月現在の法令等に基づいています。
※ 「リスクコンシェルジュ」連載全記事にはこちらからアクセスできます。
関連するコラム
-
2024.11.18
橋本 浩史
株主を賃貸人とし同族会社を賃借人とする不動産の賃貸借契約に所得税法157条1項(同族会社の行為計算否認規定)の適用の可否が争われた税務判決 ~大阪地方裁判所令和6年3月13日判決TAINS Z888-2668(控訴)~
1 はじめに 所得税法157条1項は、同族会社等の行為又は計算で、これを容認した場合にはその株主等で…
-
2024.10.20
山田 重則
固定資産税実務Q&A
<総論> Q 固定資産税の過大徴収はどの程度起きているか? Q 近年、新聞報道された過大徴収事案には…
-
2024.10.15
橋本 浩史
消費税法2条1項8号の「対価を得て行われる」(対価性)の意義が争われた税務判決 ~名古屋地方裁判所令和6年7月18日判決TAINS Z888-2624(控訴)~
1 はじめに 消費税法2条1項8号は、消費税の課税対象である「資産の譲渡等」とは、「事業として対価を…
-
2024.09.30
山田 重則
Q 近年、新聞報道された過大徴収事案にはどのようなものがあるか?
A 近年、新聞報道された主な過大徴収事案は、下表のとおりです。ここから読み取れることは、①過大徴収は…