連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク 第25回 海外子会社の兼務役員に対する報酬は源泉徴収が必要?
海外子会社の兼務役員に対する報酬は源泉徴収が必要?
Q
当社は、海外事業を拡大するため、シンガポールに子会社を設立し、当社の取締役・海外営業本部長Xに、その子会社の取締役を兼務してもらうことにしました。Xには、子会社での事業に注力してもらうために、シンガポールに住み、子会社のシンガポール・オフィスで勤務してもらう予定です。当社が、Xに役員報酬を支払う際、所得税を源泉徴収する必要がありますか。
A
所得税を源泉徴収する必要があります。
1.役員報酬に対する源泉徴収
日本の会社が、外国で居住、勤務している者に対して、給与を支払う場合には、所得税を源泉徴収する必要はありません。しかし、役員報酬を支払う場合には、取締役としての勤務が日本で行われたと考えられることから、原則として、所得税を源泉徴収する必要があります。
役員報酬であっても、取締役が日本の会社の海外支店長として勤務しているような場合には、例外的な取扱いとして、所得税を源泉徴収しなくてよいことになっていますが、取締役が海外子会社でも取締役を兼任している場合には、①その子会社の設置が現地の特殊事情に基づくものであって、その子会社の実態が内国法人の支店、出張所と異ならないものであり、②その役員の子会社における勤務が内国法人の命令に基づくものであって、その内国法人の使用人としての勤務であると認められるといった事情がない限り、例外的な取扱いは認められず、所得税を源泉徴収する必要があります。
2.X氏に対する役員報酬
X氏は、御社の取締役だけではなく、シンガポール子会社の取締役を兼任されるということですから、上記①、②の事情がない限り、御社は、X氏に対して役員報酬を支払う際、所得税を源泉徴収する必要があります。
鳥飼総合法律事務所 弁護士 石井亮
※ 本記事の内容は、2013年10月現在の法令等に基づいています。
関連するコラム
-
2025.01.20
奈良 正哉
固定資産税還付訴訟
払い過ぎた固定資産税を返してくれ、という訴訟の弁論が17日最高裁で行われた。対象の固定資産は複雑な…
-
2025.01.17
山田 重則
Q 複合構造家屋の経年減点補正率に関する裁判の争点は何か?
低層階をSRC造又はRC造、中層階以降をS造とする複合構造家屋の経年減点補正率の選択方法が裁判で争…
-
2025.01.17
山田 重則
固定資産税実務Q&A
<総論> Q 固定資産税の過大徴収はどの程度起きているか? Q 近年、新聞報道された過大徴収事案には…
-
2024.11.18
橋本 浩史
株主を賃貸人とし同族会社を賃借人とする不動産の賃貸借契約に所得税法157条1項(同族会社の行為計算否認規定)の適用の可否が争われた税務判決 ~大阪地方裁判所令和6年3月13日判決TAINS Z888-2668(控訴)~
1 はじめに 所得税法157条1項は、同族会社等の行為又は計算で、これを容認した場合にはその株主等で…