連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク 第22回 修正申告をしたのにまた間違えたら?
修正申告をしたのにまた間違えたら?
Q 当法人は、平成24年12月末で終了する事業年度について確定申告書を提出したのですが、税額を過少に申告していたことに気付いたので、修正申告を行いました。ところが、修正申告書を提出してから、その事業年度分として計上を忘れていた経費が見つかりました。どうしたらいいでしょうか。
A 法定申告期限から5年以内であれば、更正の請求をすることができます。
(解説)
1 修正申告とは?
修正申告は、申告後に、申告した税額が過少であったとか、申告した純損失の金額が過大であったなど、税額を増やす方向に変更する場合の納税者による手続きです。納税者は、課税庁による更正が行われるまでは、修正申告を行うことができます。
一方、納税者が、申告後に、申告した税額が過大であったことに気付いたときの対処の方法としては、「更正の請求」という手続きがあります。これは、税額が減る方向への変更を求める手続きで、納税者にとっては、税額を自分に有利に変更するものです。更正の請求ができる期間は、法定申告期限から原則として5年以内です。
ただし、課税庁が、更正の請求を認めない場合もあり得ます。納税者は、それに不服であれば、不服申立てをし、それでも認められない場合には、訴訟といった手続きによることになります。
このように、申告した税額が過少であったか過大であったかで、納税者が取れる手続きは異なります。
2 修正申告書の提出後の対応
修正申告書を提出した後に、税額が多すぎたという誤りを発見した場合は、税額の減額を求めることになりますから、法定申告期限から原則として5年以内であれば、前述した「更正の請求」を行うことができます。
なお、税法の改正の関係で、法定申告期限が平成23年12月2日よりも前に到来した申告について修正申告書を出したのに税額が多すぎたという誤りがあった場合には、更正の請求ではなく、「更正の申出」という手続きになります。更正の申出ができる期間は、申出の基になる申告の法定申告期限から5年以内です。ただし、更正の申出のとおりに更正されない場合であっても、不服申立てをすることはできませんので、ご注意ください。
以上のような手続きによることになりますので、いったん提出した修正申告書が誤っていたとしても、修正申告書を訂正したり、修正申告書を取り下げて新たな修正申告書を提出したりすることは、認められません。
更正の請求や更正の申出の手続きがあるといっても、納税者の主張が認められないケースもありますから、修正申告書はよく確認して提出することが必要です。
鳥飼総合法律事務所 弁護士 佐藤香織
※ 本記事の内容は、2013年7月現在の法令等に基づいています。
関連するコラム
-
2024.07.12
橋本 浩史
法人が支出した取締役の損害賠償金の損金算入の可否が争われた税務判決の紹介 ~横浜地方裁判所令和6年1月17日判決TAINS Z888-2558~
1 はじめに 法人が、その取締役が他の法人の取締役としての職務を怠ったことを理由に負担した会社法42…
-
2024.06.14
橋本 浩史
相続後に条件成就して実現した債務免除益に対する所得税課税の可否が争われた税務判決の紹介 ~東京高等裁判所令和6年1月25日判決(上告)~
1 はじめに 相続時に相続財産から控除されなかった訴訟上の和解に基づく債務が、相続開始後に条件成就に…
-
2024.05.13
橋本 浩史
賃貸人以外の者から受領した「損失補償金」が「資産の譲渡等」の対価に該当し消費税の課税対象となるか否かが争われた税務訴訟判決の紹介 ~広島地方裁判所令和6年1月10日判決TAINS Z888-2557(確定)~
1 はじめに 消費税は、物品やサービスの各取引段階において付与される付加価値に着目して課税するもので…
-
2024.04.12
橋本 浩史
総則6項を適用した課税処分を取り消した税務訴訟判決の紹介~東京地裁令和6年1月18日判決TAINS Z888-2556~
1 はじめに 財産評価基本通達(評価通達)に基づいて評価したマンションの評価額を、評価通達6(「総則…