連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク 第11回 関連会社の広告宣伝費を負担した場合,その費用を損金に算入することができるか?

関連会社の広告宣伝費を負担した場合,その費用を損金に算入することができるか?

 

 当社は,当社グループ会社の1つである子会社が行った広告宣伝(新聞への折込チラシ,車内広告等によるもの)の費用の一部を負担しました。この場合,当社が負担した費用を当社の損金の額に算入することはできますか。

 

 御社が費用を負担した広告宣伝の内容が,客観的にみて,その受け手である不特定多数の者に対して,御社の商品やサービス等の優越性を訴える効果を意図しているものであれば,その費用は広告宣伝費として損金の額に算入できますが,そうでなければ,子会社への寄附金とみなされ,その費用の一部は損金の額に算入することはできません。

 

(説明)

 法人税法上,その名義を問わず,金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与は「寄附金」とされ(法人税法37条7項),法人の支出した寄附金の額の合計額のうち,損金算入限度額を超える部分の金額は,損金の額に算入することができません(同条1項)。

 しかし,このような贈与等であっても,それが広告宣伝の費用などに当たれば,「寄附金」の範囲から除外され(同法37条7項括弧書),全額損金の額に算入されます。

 従って,当該費用の支出が「寄附金」と「広告宣伝費」のいずれに該当するのかが重要ですが,同一グループに属するA社(例えば,メーカー)がB社(例えば,A社の製品の販売会社)の広告宣伝の費用を負担した場合などには,その判断は必ずしも容易ではありません。

 この点,眼科診療所を営む医療法人である甲社が,眼鏡及びコンタクトレンズの販売を目的とする関連法人が行った広告宣伝費の一部を負担した事案において,東京地裁平成24年1月31日判決は,「ある法人の支出が当該法人の広告宣伝費であると認められるためには,その支出の対価として提供された役務が,客観的にみて,その受け手である不特定多数の者に対し当該法人の事業活動の存在又は当該法人の商品,サービス等の優越性を訴える宣伝的効果を意図して行われたものであると認められることが必要である」として,本件広告宣伝に係る折込チラシ等には,甲社の名称等の記載が存在しなかったことなどを理由に,その費用は寄附金に該当すると判断しました。

 従って,本件でも,以上のような観点から,御社の負担した費用が「広告宣伝費」と「寄附金」のいずれに該当するのかを慎重に判断する必要があります。

 鳥飼総合法律事務所 弁護士 橋本浩史

※ 本記事の内容は、2013年2月現在の法令等に基づいています。

関連するコラム