連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク 第9回 うっかりミスで12億円?!

うっかりミスで12億円?!

 

Q当社は9月決算法人なのですが、11月末提出期限の消費税申告書を出し忘れてしまいました。消費税の納付申告だったのですが、納付すべき税額は11月中に納めました。期限内に納税していても、申告書を出し忘れた当社には、何らかのペナルティが課されるのでしょうか?経理担当者がうっかり出し忘れていただけなのですが。

 

A 期限後申告をすると、原則として、納付すべき税額の50万円までは15%、50万円を超える部分については20%にあたる金額の無申告加算税が課されます。

ただし、期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があると認められる場合は、無申告加算税は課されません。

また、税務調査を受ける前に自主的に期限後申告をしたと認められた場合には、納付すべき税額の5%に軽減されます。

さらに、期限後申告書が自発的に提出され、期限内申告を提出する意思があると認められる場合で、かつ、提出期限から2週間以内に期限後申告書が提出された場合には、無申告加算税は課されません。

 

加算税とは、申告納税方式による国税または源泉徴収等による国税について、申告義務または徴収義務の違反に対して課される附帯税で、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税、並びに重加算税の4種に分かれます。

現行の加算税制度は、申告義務や徴収義務の違反に対して行政上の制裁の意味で課される附帯税であると言われています。この行政上の制裁が、究極的には税額の徴収確保を目的にしているのならば、本件のように税額を完納している場合には、加算税を賦課する必要はないようにも思われます。

しかし、単なる形式的な手続違背であっても、納税申告書の期限内提出の重要性に鑑みれば、申告書の提出を失念し、これを法定申告期限内に提出しなかったこと自体が納税義務者の重要な義務の不履行と言えるのであり、この義務違反は行政制裁としての無申告加算税を賦課するに値するものとされています。

 

ところで、法人税については、確定申告書の提出期限の延長の特例が認められています。例えば、本件のような9月決算法人は延長の特例を適用することにより12月末日が申告期限となりますが、消費税申告についてはそのような特例が存在しないため、原則通り決算日の翌日から2か月以内、すなわち11月末日が期限となります。この提出期限の違いには注意が必要です。

また、e-Tax制度による電子申告が普及した昨今では、申告書を送信したつもりがエラーで送信されていなかったというような安易なミスも想定され、従前より、申告期限徒過という事態が発生しやすくなっています。

 

過去には、250億円近くの消費税額を期限内に完納したにもかかわらず、消費税申告書を提出し忘れた会社が、12億円余の無申告加算税を課された事件がありました。このケースでは、税務署職員から指摘をされて消費税申告書を申告期限の11日後に提出したのですが、当時は、2週間以内に自発的に提出された場合の加算税免除規定がなく、納税者は裁判に訴えて闘いましたが請求は棄却され、無申告加算税の納付義務が確定しました。難解な税法解釈や高度な経営判断等を誤ったためではなく、単なる失念のような人為的な安易なミスが巨額の納税負担を生む場合があるということです。

 

鳥飼総合法律事務所 パラリーガル 高瀬 貴子

※ 本記事の内容は、2013年1月現在の法令等に基づいています。

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