信託財産

 信託は財産の管理や処分を、その知見のある者に任せる財産管理の仕組みだ。だから、管理や処分が難しいので、知見のある者にそれをやってもらいたい大事な財産を信託するのが基本である。逆に言うと自分で管理ができるものや、さほど高額でないものは信託する必要性が薄い。例えばすぐに処分することが計画されている不動産は高額な財産であることに異論はない。しかし、信託財産にすることによりその所有者が受託者名義に登記されていると、信託に慣れない地方の不動産仲介業者などは、売却の仲介に思わぬ時間を要することになるかもしれない。そこで、そういう不動産は信託しないでおくのも選択肢となる。

 アメリカの相続指南本では、遺言とならび信託は重要な道具立てとして登場する。その信託では、あらゆるものを信託財産とするような記述が多いようだ。つまり、自動車など登録制度があるものはもちろん、美術品など高価なものをはじめ、日常使いそうな家具などの動産をも含めてリストが例示されている。プロベートと呼ばれる裁判所による面倒な相続手続き回避のため、なるべく多くの資産を信託しようということなのであろう。他方日本ではプロベートはない。その点から「なんでも信託」との動機は働かない。むしろ動産などを信託財産に含めた場合、管理や処分に困ることも予想される。