改正犯収法特集 #05「(犯収法上の)特定業務と特定取引」
1 法4条別表
特定業務と特定取引は、特定事業者ごとにそれぞれ定められています(法4条別表参照)。
(なお、特定取引は、特定業務に含まれる概念です。)
例えば、【(犯罪収益移転防止法)第二条第二項第一号から第三十三号までに掲げる者】の特定業務は、「金融に関する業務その他の政令で定める業務」であり、特定取引は、「預貯金契約(預金又は貯金の受入れを内容とする契約をいう。第二十六条第一項において同じ。)の締結、為替取引その他の政令で定める取引」ということになります。
2 行為規制(法4条・6条・7条・9条)
「特定取引」を行った際には、取引時確認をしなければなりませんし、確認記録の作成・保存もしなければなりません。「特定業務」にかかる取引を行った場合には、取引記録等の作成・保存(例外あり)をしなければなりません。また、「疑わしい取引」であると判断されるような場合には、その届出をしなければなりません(以上、JAFIC『犯罪収益移転防止法の概要(平成24年11月)』11頁)。
3 特定業務の範囲
そのため、行っている業務が、特定取引等になるのか、特定取引等以外の特定業務となるのか、特定業務ではないのかについて、把握しておく必要があります。
しかし、「特定業務」については、下位法令に詳細が委ねられている部分もありますが、法4条別表では、「同号に規定する業務」「貴金属等の売買の業務」といった抽象的な定め方となっています。
この点、「特定業務」について、犯罪収益移転防止制度研究会編『逐条解説犯罪収益移転防止法』(平成21年、東京法令)223頁以下に、次のような説明がなされています。
すなわち、「『特定業務にかかる取引』とは、原則として顧客等との取引を中心とする概念であるが、顧客の計算において行う取次ぎや媒介等の場合や当該取引の準備行為には直接的に顧客等が関与せずとも対象となる場合があり得る」とした上で、若干の説明がなされています。しかし、それでも各事業者が行う具体的行為が特定業務の範囲に属するか否かについては、必ずしも明確とはなりません。
したがって、特定業務の範囲に含まれる行為であるか否かに迷った場合には、犯罪による収益の移転の防止という法の趣旨・目的(法1条)にさかのぼって、疑わしい取引として届け出る場合が想定されるか、疑わしい取引を捕捉するためにその「特定業務にかかる取引」につき取引記録等の作成・保存をしておく必要があるか、といった点を含む多面的な観点からの検討をする必要があるとえいます。
(参照)
犯罪収益移転防止制度研究会編『逐条解説犯罪収益移転防止法』(平成21年、東京法令)223頁以下。
JAFIC『犯罪収益移転防止法の概要(平成24年11月)』11頁。