連載 リスクコンシェルジュ~知財関連リスク 第4回 違法アップロードのリスクと対応法
違法アップロードのリスクと対応法
1 違法アップロードというリスク
平成22年6月,名古屋市在住の男子中学生が逮捕されました。漫画を動画共有サイト「YouTube」を通じて権利者に無断でアップロードし、不特定多数のインターネットユーザーに対して送信できるようにし、著作権(公衆送信権)を侵害した疑いでです。この少年は前後4回に渡り動画をアップロードしていましたが,それらの動画のダウンロード回数は,合計で約800万回も再生されていたそうです。
また,平成23年5月11日には,日本レコード協会会員企業が権利を有する市販DVDの映像を無断でアップロードしていた福岡県在住の男性が逮捕されています。
同協会は,2009年12月から2011年3月までで,累計12万件以上の削除要請を「YouTube」などの動画共有サイトに依頼しているそうです。
これらの事件が示すように,現代では,一般の人々が簡単に企業などの発行する著作物をデータ化し,インターネットを通じて万人に公開できてしまいます。言い換えれば,「著作物は,常に,無料で,一般に公開されてしまうリスクがある」ともいえるでしょう。
2 違法アップロードへの対処
このようなリスクに対処する方法としては,まず,違法にアップロードされたファイルを公開しているサイトの管理者等に対して,著作権に基づき削除を請求することが考えられます。
また,違法にアップロードを行った者(発信者)にコンタクトを取るため,いわゆるプロバイダ責任制限法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)に基づく発信者情報の開示請求を活用することも考えられます。この法律は,情報の流通によって権利が侵害されたことが明らかであるときに,被害者が,損害賠償請求権の行使などのために,プロバイダなどに対し,その情報の発信者の氏名や住所等を開示するよう請求することを認めています。
この請求により,著作物が違法にアップロードされて著作権が侵害された場合に,発信者の氏名や住所等の開示を受けることで,発信者本人に対して違法アップロードをやめるように求めたり,損害賠償を請求したりできるようになります。
さらに、著作権を侵害する違法アップロードには罰則が適用されますので,影響の大きな、違法なアップロード(上記の中学生でも逮捕された例は、その典型例です。)をした者に対しては刑事告訴を行うことも考えられます。
3 弁護士への相談を
このように,違法アップロードに対しては,発信者情報の開示の請求,損害賠償の請求,刑事告訴などの対処法があります。
ただ,例えば開示の請求が認められるには裁判を必要とすることが多いなど,上記対処法には法律の専門的知識が必要となりますので,違法アップロードの被害を受けた場合には,これらの業務を取り扱っている弁護士に相談するとよいでしょう。
本連載の第4回を最後までお読みくださり,ありがとうございました。
鳥飼総合法律事務所
弁護士 香西 駿一郎
【注意】本稿は一般的な情報を提供するものであり、法的助言を目的とするものではありません。個別の事案については、当該案件の個別の状況に応じて、弁護士等専門家の助言を求めていただく必要があります。また、本稿に記載された見解は筆者の個人的見解であり、鳥飼総合法律事務所を含む一切の組織の見解ではありません。
※ 本記事の内容は、2012年10月現在の法令等に基づいています。
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