会社法QA 第25回 社債

 ※ 本連載は平成17年に「新会社法QA」として掲載された内容です。その後の改正はこちらをご覧ください。

【テーマ】 社債

【解説】
1 社債を発行できる会社の拡大
 旧商法中の社債に関する規定は株式会社のみに適用され、また、旧有限会社法には社債の発行を認める規定がなかったため(旧有限会社法59条4項等)、合名・合資会社、有限会社は社債を発行できませんでした。これに対し、会社法では「会社」が社債を発行できるものとしています(会社法676条、2条1号)。つまり、株式会社に限らず、特例有限会社も、また持分会社も社債を発行することができます。

2 社債の発行について取締役に委任できる事項
 旧商法では、株式会社が社債を発行するには取締役会の決議を要するものとされていましたが(旧商法296条)、その決議事項については法定されていませんでした。これに対し、会社法では、募集社債について定めなければならない事項を法定しました(会社法676条)。その上で、募集社債の総額その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項の決定についてのみ、取締役会は取締役に委任することができないとしています(会社法362条4項5号)。取締役に委任することができない事項としては、募集社債の総額の上限や募集社債の利率の上限、募集社債の払込金額の総額の最低金額などが規定されています(会社法施行規則99条)。

3 打切発行
 旧商法では、社債の応募が社債申込書に記載した社債総額に満たないときは、社債全部が不成立になることが原則でした(旧商法301条3項)。これに対し、会社法では、応募額が募集社債の総額に達しないときは、その応募額についてのみ社債が成立するのが原則となりました(会社法676条11号参照)。つまり、社債についてもいわゆる打切発行が原則となりました。

4 社債の銘柄統合
 社債の銘柄統合とは、一般に、社債の流動性を高めるため、複数の取引銘柄の社債を同一の取引銘柄の社債にすることをいいます。会社法には、社債の銘柄統合について明示的に定めた規定はありません。しかし、会社法では、社債の「種類」の定義規定を置き、社債の発行時期のいかんにかかわらず、社債の内容が同一であれば、社債の種類が同一となるという整理がされています(会社法681条1号)。そのため、①すでに発行した社債と同一の種類の社債を新たに発行すること、あるいは②すでに発行している種類の異なる社債の内容を、社債権者集会の決議等に基づいて変更して同一の種類とすること、によって、社債の銘柄を統合することができます。

【質問】
 当社は取締役会設置会社です。市場の動向に合わせて、募集条件を変化させながら継続的に社債を発行したいと考えていますが、代表取締役にその判断を委ねることはできますか。また、一定の期間を定めて購入希望者に随時個別的に社債を発行することはできますか。

【選択肢】
[1] 代表取締役の判断で継続的に社債を発行できるようにすることは可能だが、随時個別に社債を発行させることはできない。
[2] 継続的に社債を発行することもできないし、随時個別に社債を発行することもできない。
[3] 継続的に社債を発行することも可能であるし、随時個別に社債を発行することも可能である。
【正解】 [3]

【解説】
1 シリーズ発行
 取締役が、市場動向に応じて募集条件を変化させながら、継続的に社債を募集することをシリーズ発行といいます。
 代表取締役が独断で社債のシリーズ発行をすることはできません。しかし、取締役会において次のような事項を決定して代表取締役に委任すれば、代表取締役の判断でシリーズ発行をすることも可能です。
 すなわち、①2以上の募集に係る社債の募集事項の決定を委任する旨、②各募集に係る募集社債の総額の上限の合計額、③募集社債の利率の上限、④募集社債の払込金額に関する事項の要綱を定め(会社法施行規則99条)、その他の事項については、代表取締役に委任すれば足ります。

2 売出発行
 一定期間を定めてその期間内に購入希望者に対して随時個別的に社債を売り出す方法によって社債を発行する方法を売出発行といいます。
 代表取締役が独断で社債の売出発行をすることはできません。しかし、取締役会において次のような事項を決定して代表取締役に委任すれば、代表取締役の判断で売出発行をすることも可能です。
 すなわち、①募集社債の総額の上限の合計額、②募集社債の利率の上限、③募集社債の払込金額に関する事項の要綱を定め(会社法施行規則99条)、その他の事項については、代表取締役に委任すれば足ります。

3 【質問】の解答
 取締役会が上記の事項を定めて代表取締役に委任すれば、代表取締役の判断でシリーズ発行をすることも売出発行をすることも可能です。
 したがって、正解は③になります。

 

※ 本記事は平成17年に「新会社法QA」として掲載しましたが、会社法改正に向けた動きとの混同を避けるため、平成24年12月にタイトルから「新」を削除しました。その後の改正を反映したこちらをご参照ください。

 

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