税務訴訟 税務訴訟の基礎実務 (2)
税務訴訟の基礎実務 (2)
今回は、税務訴訟実務にある問題点を取り上げたい。
その1つは、税務訴訟に関わると分かってくるのだが、憲法の最も重要な「三権分立の原理」が税務訴訟では軽んじられていることである。
1) 東京地裁等の行政訴訟専門部には、国税庁から派遣されている調査官という優秀な職員が必ずいる。これは、裁判所と国税庁が実質上一体となり、国税庁支配下の課税庁の課税処分等を判断するということである。これでは、司法による行政のチェックが困難となることは明らかである。少なくとも、納税者から裁判所が公平であるように見ることはできない。この調査官制度では、裁判官が税務実務の実態をほとんど知らされない。社会常識から大きく逸脱する判決が出る原因の1つと言える。
2) 裁判官と検察官には相互に交流する制度として、判検交流がある。つまり、裁判官が検察官となり、検察官が裁判官となるのである。裁判官が検察官になる時には、訟務検事になることが比較的多い。この訟務検事は、税務訴訟においては、被告課税庁の訴訟代理人になる。したがって、税務訴訟においては、判決を言い渡す者も被告代理人として課税庁を勝訴させようとする被告代理人も共に、裁判官であることが決して珍しくない。これで、裁判所が公平に裁判できるのかと、納税者が不安に思うのは明らかである。
さらに、訟務検事を経験した裁判官も、再び裁判官に戻るのである。この裁判官は、課税庁側の立場で物事を考えて行動していたのであり、その感覚のまま裁判官に戻り、税務訴訟を担当することもある。憲法の精神はどこへいってしまったのであろうか。
(文責 鳥飼重和)
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