税務訴訟 課税実務と社会常識
課税実務と社会常識
課税実務は、社会常識に反することが比較的多い。たとえば、子会社が業績不振から破綻懸念の状況であるときに、親会社が経済的に支援するときには、ほとんどの例外なく、親会社に対して、課税実務は寄付金課税する。
その原因は、課税実務を執行する課税庁職員の意識が、潜在的ではあるにしろ、潰れる危険のまったくない国家を背景にしているからである。社会的には、この潰れる危険があるかないかは決定的な意味を持つ。
潰れる心配のない組織を前提とするならば、業績不振や破綻懸念があるぐらいで、経済的支援をしなくても心配はない。
しかし、潰れる心配をしなければならない組織では、潰れる心配を打ち消すには早めに手を打つのが望ましいとされる。
なぜなら、手を打つのが遅くなればなるほど、その組織の再建にかかる費用は急激に逓増するからである。これは、国鉄の赤字の大きさで国民の常識になっている。破綻させるのでも、早期の方が損失は小さくて済む。
しがたって、子会社の救済は早目が社会の常識になっている。今問題になっている不良債権の処理でも、処理の遅さが日本経済を破綻の淵にまで追い込んでいることで理解できよう。
ところが、課税庁は、相変わらず、子会社救済が早めであることに対し、経済的合理性を認めない運用をしているようである。潰れない国家を背景にしている行政庁の役人は、潰れる事に必死に対応しようとしている民間のことが理解できていない。これは如何ともしがたい。
この不幸な状況を打開するのは、税務訴訟により、社会常識・経済合理性を確立してゆくことである。ありがたいことに、裁判は本来的には、社会の常識を基礎にすべきものだからである。裁判の場という司法から、化石化した行政に社会の風を吹かせることが急務である。
(文責 鳥飼重和)
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