税務訴訟 出廷陳述権
出廷陳述権
今年の税理士法の改正によって、税理士に出廷陳述権が与えられた。この改正の課税実務における意義は、決して小さくない。従来、税務訴訟で税理士が関与できるのは、証人としてか、補佐人となることであった。
補佐人は、特別の学識経験がある専門家を弁護士が専門知識を持たない分野に関して、法廷に於いて補佐をしてもらう人である。弁護士は法律家ではあるが、税法の特殊性からほとんど税法は理解が困難な専門分野になっている。
そのため、弁護士が十分な法廷活動をするには通常、税理士の補佐があることが望ましい。しかし、補佐人は裁判所の許可がないと付すことは許されないことになっている。しかも、裁判所は、税法も法律であるから法律家である弁護士が補佐を必要とする筈がないという形式論理で、なかなか許可をしなかった。
今回の出廷陳述権は、その点の不都合を除去して、税務訴訟に関しては、裁判所の許可なしに税理士が補佐人になれるとした。このことにより、税理士は税務訴訟に自由に関与できるようになった。
税理士が税務訴訟で弁護士と一緒に法廷活動をすれば、生きた法律としての税法がいかなるものかが実感できる。税法における法律要件の解釈の厳しさや、証拠による証明がいかに重要かが肌で痛いように分かる。
そうすれば、法律実務は証拠なしには成立しない事が理解できる。それによって、税理士は法律家に一歩近づく事になる。このような法律家的な税理士が多くうまれることになれば、課税実務にも「法の支配」の理念が確立する可能性が生まれる。
そのためには、課税処分にいかに不服があっても、不服申立・税務訴訟で戦う事をほとんどしない実務を改める必要がある。そうでないと、せっかく出廷陳述権を認められた意味がなくなる。出廷陳述権が与えられた税理士は、このことによる社会的責任が重くなったと自覚すべきである。
(文責 鳥飼重和)
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