税務訴訟 出廷陳述権[2]
出廷陳述権[2]
今年の税理士法の改正で、税理士に出廷陳述権が与えられた。このことの課税実務への影響は大きい。
本来、民事訴訟法60条は、専門知識を持った方を補佐人として法廷活動する事を認めていた。訴訟で真実を明らかにし、両当事者を公平に扱うには、法曹が持っていない専門知識が法廷の場で必要になるからである。
ただ、補佐人に法廷で活躍してもらうには、裁判所の許可が必要であった。税務訴訟では、弁護士は税務に関する法令・実務を知っている者は極めて稀である。裁判官も課税庁の代理をする訟務検事も同じである。
したがって、税務訴訟には、原告側には税務の専門家である税理士・税務専門の学者が補佐人として関与する事が望ましいのは確かである。ところが、従来は、原告側が税理士を補佐人とするべく裁判所に許可を求めても、ほとんど却下された。ところが、訟務検事の横には国税局員である訟務官が法廷にいて活動しているし、東京地裁等では国税庁派遣の優秀な調査官がいる。これは、税務訴訟の法廷に税務の専門家が必要な事を示すものであり、税理士は補佐人として許可されるべきであった。
そこで、今回の税理士法改正で、裁判所の許可なしで、税務訴訟で税理士が補佐人になれるようになった。ただし、弁護士と一緒でなければならないという制約がついているが。
税理士が補佐人として法廷で活動できる範囲に関して、論争がある。
分かりやすくいえば、税理士が補佐人として、証人等の尋問ができないかである。これを認めないという考え方では、税理士が訴訟手続を知らないから納税者に不測の損害を与える恐れがある、というのが主要な理由である。
裁判所の許可で補佐人となるのは、例えば医療訴訟における医者が典型的であるが、医者は訴訟手続を知らないのに証人等の尋問を許されている。しかも、弁護士が関与しない法廷においてもである。
それに反し、裁判所の許可なく税理士が補佐人となるには弁護士が常に横にいるのである。どうして納税者に不測の損害が生じる恐れがあるのであろうか。また、国税局員である訟務官は法廷で証人等を尋問しているが、彼らは一様に訴訟手続に精通しているのであろうか。
やはり、税理士にも証人等の尋問を認めるのが自然である。それによって何の不都合もない。不都合があれば、裁判官とか弁護士によって掣肘することができるからである。
このように税理士に全面的に税務訴訟に関与が認められると、税理士は裁判所で展開される事が税務に関する本当の実務である事が理解できるようになる。税法に関する要件事実に厳しさ、要求される証拠の重要性等を実感できるからである。
本当の実務が実感できると、税務相談・申告等の時に税務に関する法令等をしっかり確認し、法令等の適用を万全にするためにしっかりした証拠を確認・作成することになる。本来、証拠なしに税務実務はないのであるが、現状は証拠なしが普通である。
この望ましくない現状を変えるきっかけとなり得るのが、出廷陳述権の活用である。この活用によって、税理士も税務に関する法律家に成長できるのである。税理士は出廷陳述権を大いに活用すべきである。これによって、正しい実務が実現することを期待したい。
(文責 鳥飼重和)
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