税務訴訟 補佐人税理士は尋問できるか
補佐人税理士は尋問できるか
税理士法が改正され、弁護士である訴訟代理人と一緒という条件はつくが、税理士が裁判所の許可なしに補佐人として法廷で陳述することができるようになった。このことにより、税理士は司法の場において、税務の専門家としての活動が許されることになった。
この意味は、税理士が税務に関する法律専門家としての地位を持つに至ったということである。本来、税務問題も法律問題であり、法律効果・法律要件を中核として法律の適用のためには立証が必要である。そのために、税理士も税務実務を実践するには、租税に関する法令という実体法的知識以外に、立証という訴訟法上の実務知識を必要とする筈である。
ところが、税務実務の現実は、必ずしもそのようにはなっていない。むしろ、その現実は、立証という面を忘れ去ったかのような実務である。出廷陳述権が税理士に与えられたことにより、税理士は本来のあるべき姿の税務実務に直面し、証拠なしに税務実務が存在しないことに気づくことになろう。
この出廷陳述権で問題となるのは、税理士が尋問できるのかという点である。日本税理士連合会編集の「改正税理士法の重要ポイント」22頁以下では、税理士に尋問権があるとの解釈を示している。これに対して、最近出版された訟務検事の著書である「出廷陳述権を活かすための租税訴訟実務講座」(ぎょうせい,2002)14頁は、次のように述べて、税理士の尋問権を否定している。
「税理士は訴訟事務に関しての専門家ではないため、弁護士である訴訟代理人とともに出頭することを前提として、裁判においても、陳述するにとどまり、尋問することはできないことに留意しておく必要があります。」
税理士に尋問権がないと訴訟検事が述べているのであるから、現実に法廷で税理士が尋問権を行使した場合に、担当の訟務検事が異議を述べることになろう。その結果、最終的には、裁判所の判断にゆだねられることになる。
ここでは、詳細な議論をするつもりはない。ただ、素朴な疑問を1つだけいいたい。法廷で訟務検事の隣にいる訟務官は国税官吏であるにすぎず、訴訟事務に精通していないのは税理士と同じであるのに、税務訴訟の実際では、尋問をおこなっている。訟務官は尋問ができて、税理士が尋問できないというのは、不自然ではないのか。
(文責 鳥飼重和)
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