税務訴訟 国税不服審判所の変化の徴候
国税不服審判所の変化の徴候
今年の前半だけで、当事務所が代理した審査請求を全面的に認めて、更正処分を取消した裁決が2件出た。
従来の我々の感覚では、国税不服審判所は公正・中立であるという印象は持ちにくかった。
審判官の大多数が課税庁の職員であるし、審判官の対応も納税者の言い分を素直に受け止めているか疑問があった。
したがって、我々は、審査請求をした後、審判官の対応に納得できないものを感じた場合には、審査請求をしてから3ヶ月以上を経過した後に、裁決をもらわないで、地方裁判所に税務訴訟を提起することも行なった。
しかし、今回の2件では、審判官の対応に当事務所の担当弁護士・税理士が納得できるものがあったので、国税不服審判所(長)の裁決を受けるまで待つことにした。
税務実務の現場では、相変わらずの裁量的な税務行政が行なわれているようであるが、審査請求段階では、審査請求全体から見てどの位の割合かは分からないが、納税者から見て公正中立な取り扱いが出てきたのは事実のようである。
その原因は、まだ、ほんの一部の裁判所であるが、課税関係の実質を良く見て、実態に即した税務訴訟の判決を言い渡す裁判所が登場したからであろう。
そのため、心ある審判官は、課税関係の実態を把握するように努め、地方裁判所で耐えられない更正処分を維持しないと考えるようになってきたからではなかろうか。
その意味では、課税に関する一連の流れの中で、国民のことを考える法治主義が生まれようとしている。この課税関係における「新しい現実」が未来の法治主義の萌芽であることを祈りたい。
(文責 鳥飼重和)-2003.7.10
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