税務訴訟 税務に関する意見書
税務に関する意見書
当事務所の専門分野は税法(税務訴訟を含む)と会社法であるが、従来から、会社法の分野では意見書を求められることが多かった。
会社法分野では、最終的に取締役の法的責任の問題等のリスクにつながるために、専門家の意見書が必要な場合が多かったからである。
しかし、税法分野では、意見書を求められることは多くはなかった。それは、大企業の税務では、大企業が課税OB等の活躍で課税庁との実質的な事前相談で税務に関するリスクが回避できたからである。
ところが、最近の経済活動の変化は著しく、その変化に沿った経済活動を迅速にするには、税務に関する従来の実質的事前相談では対応できなくなっている。
その理由の1つは、課税庁の人間には最近の企業改革の必然性が理解されておらず、特に経営の「スピード」という感覚がないために、迅速な回答が得られないからである。
もう1つの理由は、企業活動の新しい動きに関する理解が十分でないと認識している課税庁側が、企業側の事前相談に対して税務的な判断を示せなくなっているためである。
企業は、通常は、税務的なリスクが残る場合には、意思決定を遅らせるか、意思決定を中止する。その位、税務問題は経営判断に影響を与えるものである。
その最大の理由は、従来も現在でも、税務実務には、現場の裁量性が高く、まったく予測可能性がないからである。しかも、税務の実務における常識は、社会における経済・経営常識とはまったくかけ離れている場合が多く、それを従来は多くの裁判所が支持してきたのである。
このために、企業が大きな経営判断をする場合には、同時に税務問題も大きくのしかかってきて、しかも、予想できない大きなリスクを想定しなければならないのである。
ところが、日本の課税実務は、納税者である企業側の事情を理解せず、課税庁側の都合で動いていた。この現状は今も変わらない。
しかし、現在の企業は大きな改革をしなければならない状態にあるため、税務上のリスクを完全に回避できない場合にも、経営判断をしなければならなくなりつつある。
それでも、税務上のリスクを最小限にしようとして、税法専門の法律事務所に税法に関する意見書を求めざるを得なくなってきたのである。
この企業の切ない状況は理解されるべきである。そうでないと、日本は最悪の税務実務環境の中で、企業活動を不当に制約し、日本企業の競争力を著しく削ぐ結果になるからである。
日本のまともな企業関係者で、現在の税務実務が合理的であると思うものは一人としていない。この現状を変えなければ、将来の日本は明るくならない。これだけは断言できる。
(文責 鳥飼重和)-2003.7.28
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