平成13年商法改正 金庫株等の商法改正
金庫株等の商法改正が成立した。その詳細は来月以降に説明したい。ここでは、金庫株が解禁されたことによる企業法務における意味を簡単に触れておきたい。
従来の商法では、自己株式の取得が原則的に禁止されていた。それは、資本維持の原則に反する等の各種の弊害を除去するためであった。ここでは、間接金融を中心として経済社会にあって、金融側である債権者の保護を図ることを重視したといってよい。
しかし、現在の経済社会は直接金融を中心とする資本市場経済になっている。そこで重要なことは、経営の効率性である。経営者は資本コストを基盤にした経営効率を追及することを要求される。
資本市場における企業の安全性は、法律によって資本維持を強制するのではなく、むしろ、経営者に経営効率を高めるための他人資本・株主資本間における資本構成の自由を認め、他方、それを資本市場が監視することによるべきであろう。
その意味では、金庫株を解禁したことは、資本市場時代に相応しい環境整備をしたことになる。しかし、金庫株の改正では、自己株式を取得できる範囲を配当可能利益の範囲以内に限定している。その限りでは、経営者の経営の自由は制限されたといえる。
金庫株が認められた背景には、株式の相互持合の解消による株価下落の防止という面があることは否定できない。また、株式の相互持合の解消による安定株主不在に対する企業防衛手段の付与という側面があることも明らかである。
金庫株は自己株式の取得に始まるから、それに関連して、相場操縦問題・インサイダー問題に直面する。この点について、証券取引等監視委員会の人員と活動の充実を招来すること、証券取引法の改正等で対処されるが、企業法務上も重大な注意が必要である。
いずれにしても、金庫株の問題は資本市場時代にあって、企業法務における重要問題に直結する。経営者・財務担当・法務担当は、金庫株についてしっかりした理解をする必要がある。
(文責 弁護士 鳥飼重和)
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