平成13年株主総会 株主総会の権限に関する商法改正問題
最近の商法改正は、株主総会に関連するものも少なくない。取締役会との関係で、株主総会の権限が大きく変わるのが、利益処分である。従来、公開企業のほとんどでは、第一号議案は利益処分案承認の件であった。
しかし、商法等の一部改正する法律案要綱中間試案では、一定の条件のもとで、第一号議案は利益処分案承認の件ではなくなる。つまり、利益処分は、株主総会の権限ではなくなり、決議事項から報告事項に変わる。
したがって、利益処分に関しては、株主総会での説明義務の問題は残るが、原則的に言えば、議案でなくなるために、利益処分に関する質問に対する説明が説明義務違反でも、決議取消の問題は生じない。
利益処分の内容の一部を構成する「取締役等の賞与」は、商法改正があれば、株主総会が決議する対象でなくなり、実質的には取締役会が決定できることになる。ただ、この点に関しては、中間試案では「なお、検討する」とは書いてある。
現状の原案どおりであれば、税引き後利益等の業績に連動した取締役賞与が、取締役会の決議で可能になる。このような業績に連動した賞与は、取締役のインセンティブを高め、その結果、会社の経営の効率化を図る原動力となる。
ただ、取締役のインセンティブは、中間試案が示している執行役および各種委員会を選択した会社では、むしろ、執行役が業務執行にあたるので、取締役のインセンティブよりは、執行役のインセンティブをいかに図るかを真剣に検討すべきことになる。
取締役の報酬は、執行役および各種委員会を選択しない会社では、中間試案でも、株主総会が決めることになっている。取締役の賞与は取締役会が決めて、取締役の報酬は株主総会が決めるというのは、理解しにくいことである。
私見では、取締役の報酬(ストックオプション等も)も取締役会が決めて良いと考える。その代わり、お手盛り防止のために、各取締役の報酬額を開示するべきでる。株式の相互持合が解消傾向にあることから、情報開示がしっかりなされれば、機関投資家等からの批判でお手盛りはある程度防止できるからである。
いずれにしても、今回の商法改正問題は、議員立法とか政府提案とかが混在し、必ずしも理論的な統一が取られておらず、将来の日本企業を強化できるかも、相当疑問がある内容になっている。この点に関して、今回は株主総会の権限の例を1つ取り上げた。
(文責 鳥飼重和)
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