平成15年株主総会 第1回 連載に当たって
第1回 連載に当たって
今回から、主としてH15年6月の株主総会に向けての対応を随時、HPで明らかにする。3月総会には、間に合わないかもしれないが、5月総会にも参考になると思われる。
平成13年、平成14年に商法の改正があったので、今年の株主総会も、改正商法への対応が必須となる。定款変更議案として、特別決議の定足数の緩和、単元未満株式等の買増制度の採用、株券失効制度への手当て、委員会等設置会社の選択に関連した事項、取蹄役等の責任軽減等が課題となる。
定款変更以外の議案では、委員会等設置会社を選択した場合には、社外取締役の選任、業績連動型報酬の導入をも含む取締役報酬額の改定等がある。
株主総会の議案に関しては、昨年話題となった東京スタイルのような株主提案で可決される可能性のあるものが登場するかは、今年も注目する必要がある。
この他、昨年度に引き続き、株主総会のIT化の導入をすべきかは課題として残っている。また、定款で取綿役等の責任軽減規定を定めた会社は、取締役等に支払った報酬等を営業報告書に記載することを要求される。この場合に、株主総会上での報酬に関する質問が注目される。
今年の株主総会の運営方法は、従来にもまして、それぞれの会社の個性に合わせて運営されるべきだが、ある程度類型化される運営方法の中で、適切な運営方法の選択と実践が必要性である。
第一に、一般株主が多数来場する通常の株主総会は、株価下落と将来見通しが見えないために、会社・経営者に対する将来への見通し・方向性等のIR重視を一歩進めたものとなろう。
第二に、特殊株主、運動派株主等、ひと筋縄ではいかない株主が多数来場する株主総会は、それなりの心積もりと十分な準備で臨む必要がある。ここでも、一般株主が多数来ていることを忘れてはならない。ある意味では、特殊株主と会社側のいずれが、一般株主を味方につけるかがこの場合の株主総会の運営が円滑に行くか否かの決め手になる。いまのところ、特殊株主側が上手であるようだが。
第三に、今年は例年になく、不祥事や企業実態の悪い会社の株主総会が多くなる。減損会計の前倒しを会計監査人から事実上強制される企業が多くなるから、その結果、実質債務超過とされるか、それに近い状態の企業が相当数出る可能性が高い。
銀行業界のように、税効果会計に対する金融庁の見直し要求から、会計監査人の繰延税金資産の減額による自己資本率の低下という問題を抱えている場合には、株主総会でも当然問題視されることは必定である。
このように、今年の株主総会は、従来の慣例を覆されることから来る企業危機に対する対応をしっかり抑えておく必要がある。このような問題点が多い場合には、その問題点に対する対応と、その問題点に引き寄せられてくる特殊株主等の問題株主への対応もしっかりしなければならない。
これら各類型ごとの株主総会の運営方法は、次回以降に順次説明をするつもりである。そのほか、議長、答弁担当役員、事務局、社員株主等の役割、あるいは、リハーサルの仕方、株主質問への回答方法等も解説する。少しでも、役に立つ説明にしたいと思っている。
(文責 鳥飼重和)
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