平成15年株主総会 第2回 安定株主対策

第2回 安定株主対策

 従来の株主総会では、安定株主がいて会社提案の議案を賛成多数で決議できることが当然の前提であった。すなわち、株主総会前に、株主総会における議案の採決の結果は予測が出来たのである。

 現状でも、大多数の会社の株主総会は従来と同じである。しかし、株式の相互持ち合い構造が崩壊過程に入り、また、会社が保有する株式の投資効率が問題とされる傾向にあることから、安定株主比率が大幅に減少している企業がある。

 このように安定株主比率が低くなっている企業では、場合によっては会社提案の議案が否決され、株主提案の議案が可決される可能性が出てくる。昨年の東京スタイルのように株主提案に賛成する機関投資家も増えているからである。

 従来の日本では、株主総会における株主提案と同じように、敵対的買収も成立しにくかった。友好的買収か、IDCやエスエス製薬のように非友好的買収は成立したことがあるが、敵対的買収までは成立しないのが常識であった。

 しかし、年功序列・終身雇用という日本的経営が崩れつつある現状からすると、従業員全体の共同体社会の構造は維持できず、資本市場の考え方が常識化し、経営効率の観点からの敵対的買収を許容する社会意識に変化するかもしれない。

 したがって、安定株主比率が低下している企業は、安定株主を増やすための対策を立て、かつ、それを実行する必要がある。そのために、一般株主を増加させることが必要である。

 一般株主は、比較的長期保有が多く、企業あるいは経営者のファンになれば、その数・その保有議決件数が増加すれば安定株主と出来る。なにせ、1400兆円を超える資産を保有しているのであるから、企業に変わる有力な安定株主である。

(文責 弁護士 鳥飼重和)

関連するコラム

鳥飼 重和のコラム

一覧へ