平成15年株主総会 第4回 円滑な議事運営
第4回 円滑な議事運営
株主総会を円滑に運営するには、議長が議事整理権を理解し、それを行使できることが重要である。
議長は商法上、株主総会の議事運営に関して、オールマイティといってもよい権限が与えられている。その根拠条文は、商法237条の4第2項及び第3項である。
「議長は総会の秩序を維持し議事を整理す」
「議長はその命に従わざる者その他の総会の秩序を乱す者を退場せしむることを得」
この条文を素直に読めば、議長に総会の議事整理と秩序維持に関する裁量権があることが分かる。議長の裁量権は、会議体である総会の運営が円滑に進行するようにするために必要不可欠だからである。
議長の裁量権には、会議体である総会の目的を達成するために、株主に発言の機会を与え、他方、株主の質問に対し、経営の概況等を理解させ、議案の賛否に必要な説明をする義務を負うという限界がある。
しかし、この裁量権の限界を守れば、議長の議事整理と秩序維持の裁量権が認められる。その裁量権の範囲はきわめて広い。
議長の指名を受けずに、株主は発言できない。議長の指名で株主が発言しても、発言時間を経過し、あるいは、発言が不適当で議長の指示に従わない場合に、議長がその株主の発言を止めさせることが出来る。
したがって、議長自身がこの強力な議事整理権を理解した場合には、議長が株主に振り回されることはありえない。むしろ、株主総会を良く研究している株主が議長の議事整理を恐れることになる。
つまり、株主総会の運営は旨く行くようになっているのである。商法の規定がそのように仕組みを作っているのである。議長は株主総会を恐れる必要はないのである。
それなのに、不当に長い時間の株主総会が行なわれるのは、議長の議事整理の理解が不足しているか、それを理解しても、実行する勇気がないか、その勇気を持たせる準備が不足しているからである。
ただ、一般株主しか出席せず、まともな株主質問しか出ない株主総会では、議長の議事整理は柔軟に活用すれば足りる。投資家である株主との議事運営の流れの中での対話が成立するようにすれば良いのである。
いずれにしても、議長が株主総会の運営に自信を持つことが株主総会運営が成功するために必要なことである。そのためには、議長は議事運営におけるオールマイティ性を理解すべきである。
(文責 鳥飼重和)
投稿者等 | |
---|---|
業務分野 |
関連するコラム
-
2024.12.20
奈良 正哉
ホンダ日産経営統合
ホンダと日産は経営統合する方向だ。事実上ホンダによる日産の救済だろう。 日産は、スカイラインやフ…
-
2024.12.19
奈良 正哉
政策株売却金で投資
東京海上は政策保有株式の売却金を戦略的な投資に当てている。あらたに建設コンサルティング会社を買収し…
-
2024.12.16
奈良 正哉
アクティビストの保有期間
日経に主要アクティビストの平均投資期間が掲載されている(12月5日)。2~3年が多いようだ。そんな…
-
2024.12.04
奈良 正哉
野村証券社員強盗殺人未遂・放火
野村証券の元社員が、顧客への強盗殺人未遂・放火で起訴された。これを受けて野村の社長以下幹部役員が自…
鳥飼 重和のコラム
-
2018.08.22
鳥飼 重和
褒めることの効用とそれをビジネスに活用できるか?
褒めると女性が美しくなる、これは、科学で証明されています。 褒めるのに効用があるため、…
-
2018.08.07
鳥飼 重和
全ての事態の羅針盤となる考え方を用意する、が正解
三原山の大爆発があったら、最優先に考えるべきは、人命の危険です。次に、適切な回避策を考える、これが人…
-
2018.08.06
鳥飼 重和
ルールと人命、どちらが重要でしょうか?
答えは、簡単だと思われるでしょう。そりゃ、人命の方がルールよりも重要だよ、となるでしょう…
-
2018.08.02
鳥飼 重和
一休さんの遺言で困難を乗り越えた その原因は?
なぜ、一休さんの遺言で、弟子たちは困難を乗り越えられたのでしょうか? その根っこに、人間は、どん…