平成15年株主総会 第9回 質疑応答の実際 その1
第9回 質疑応答の実際 その1
質問1
業績が良いのに増配しないのはなぜか
株主の立場からすれば、業績がよければ株価が上昇し、本来的な株主利益が獲得できる。そういう場合には、十分満足しているから、増配しなくても文句はないともいえる。
ただ、そういう場合でも、一般株主は配当に関心が高いから、できれば増配があるとありがたいと思う。それが質問になるのである。
ところが、今般のように、業績が良いのに株価が上がらない企業が多い場合には、株主は業績の良いことによる利益の分配を株価上昇から獲得できないことになる。
そこで、業績による会社利益の還元を増配ということにして欲しいというのがこの質問になって現れることになる。特に株価水準が低い場合には、一般株主にとっては、配当利回りが重要となる。
しかも、最近は株主利益重視の立場から、継続的に増配する企業がでており、そのような企業の株価は堅調であるということも、この株主質問の背景にあるのである。
そうだとすれば、この質問に対する回答は、株主に対する利益還元についての会社の姿勢を示すものでなくてはならない。
「会社の財務体質の強化を図り、長期的、継続的に安定配当を図ることを方針としていますので、ご理解と賜りたい」という回答に、満足する株主はいない。
株主への利益還元に関する姿勢が示されているとはいい難いからである。高い金額であれば格別、低い金額での「安定配当」は、実質上「株主の利益無視」と受け取られると考えるべきである。
増配しない場合でも、それが株主の利益の増大につながる、という回答にならないと、回答としては合格点が付かない。
「確かに、増配することも株主様への利益還元の有効な方法でありますので、増配についても検討いたしました。しかし、当社は厳しい競争が展開されております業界において、勝組になるためには思い切った投資、研究開発が重要であると判断し、そこに資金を集中的に投下することが増配よりも、中長期的に見て株主様の利益になるものと確信したのです。
ご理解をお願いする次第です。」
この回答は、一貫して株主利益から組み立てたものである。この方が、むしろ、株主は増配をしないことを評価することになるのである。この評価がより高くなるか否かは、回答する議長等の回答する際の態度・姿勢等にかかっている。
質問2
株価の低い現状でこそ、自社株の取得をすることが株主の利益を重視したものになるのではないのか。そうしないのはなぜか。
キャッシュフローの使い道は、最終的には、株主利益につながらないといけない。したがって、回答も株主利益の立場から考えることが望ましい。
キャッシュフローの使途は、株主への配当、自社株の取得、取締役等への賞与、投資・研究開発、MAの原資、借入金・社債の返済等が考えられる。
いずれも、最終的には、株主利益とつながりを持ちます。そこで、いずれの選択をすることが、会社の置かれている現状から見て適切であり、最終的には株主利益の最大化につながるかということを説明すればよいのある。
「株主様の言われるとおり、株価が低い現状での自社株の取得は株主様に対する利益還元につながります。しかし、当社は、ご存知のように有利子負債が多く、財務体質の強化が最も重要な課題となっております。そのため、キャッシュフローの大半を使いまして、思い切って有利子負債を返済し、財務体質を強化いたしたいと考えております。
来期も有利子負債の返済を継続し、来期を以って、財務体質を強化についての目途を立てる計画です。このような選択が当社の将来の健全な発展につながり、最終的には、株主様の利益を最大化するものと考えている次第です。」
(文責 鳥飼重和)-2003.6.10
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