平成15年株主総会 第10回 質疑応答の実際 その2

第10回 質疑応答の実際 その2

質問3
○○事業部門は3期連続で大きな赤字を出しているようであるが、この部門を他の企業に譲渡する等すれば、もっと業績は良くなるのではないのか。

 株主からすれば、赤字の事業部門から撤退すれば、その赤字分が利益に転化し、業績改善するのに、なぜそのようにしないのか理解できないのである。

 このような質問の背景には、経営者が経営効率を重視して株主の利益を考える経営をしないで、赤字部門で働く従業員、そこと取引している系列会社等の利害を重視しているからではないかと、経営者の姿勢についての疑問がある。

 したがって、回答に当たっては、経営者は経営効率を重視し、その観点からも現状としては赤字の○○事業部門から撤退しないでいること説明すべきである。

「確かに、○○事業部門は3期連続で赤字です。しかし、この部門は、当社が△△の事業分野の将来性に着目し、そこに参入してしっかりした地位を確立して当社の将来の利益の柱にしようとしている戦略的なものです。この分野の将来性に気づいている企業が多いために、巨額の設備投資・研究開発費を投下している割には、現状は競争が激しいために利益を出すにいたってはいません。それでも、当社のその分野におけるシェアは上昇傾向にあり、あと、2年から3年のうちに黒字化できるものと予想しております。したがいまして、○○事業部門における赤字は将来の大きな黒字を出すための産みの苦しみでありますので、株主様のご理解とご支援をお願いする次第です。」

 将来の黒字を予想できる場合には、上記の回答が可能である。しかし、現状の赤字を短期間で黒字化できるという予測が出来なくとも経営を続ける場合もある。

 経営は将来のさまざまな事柄の予測の上に成り立つ不確定・不透明な活動であるから、株主が心配するのは、赤字の事業部門を続けることは、将来の大きな損失を招きかねないということである。

 したがって、将来の見通しが必ずしも明確でない場合には、赤字の事業部門を継続させるにも、将来の不測の事態に備えていることを明らかにし、株主の不安を拭い去る必要もある。

「○○事業部門の将来性に関しては、会社の内部においても意見が分かれております。その事業分野の将来性を考えますと、将来に関しての危惧があるからというだけで撤退することは会社の成長性を失いかねません。他方、当社の思惑通りの結果の出ない場合も考える必要がありますから、あと2年間は、この事業部門を存続させて会社の新しい柱を作るべき努力をしますが、2年後に売り上げに対し○%の営業利益率をあげられなかった場合には、○○事業部門を何らかの方法で清算させることにしております。」

質問4
当社の取締役等の経営陣の持っている当社株式は非常に少ない。これでは、当社の経営陣は株主と同じような立場から、株価に関心を持てず、そのため、株価上昇に関して熱心になれないのではないか。

 この質問は、経営陣が株価に真剣な関心をもっているか、その結果、株価上昇に熱心に取り組んでくれるかを心配する株主の本音である。

 最近、大和證券グループや日興コーディアル証券グループで、役員に定期的に株式を購入させたり、退職金代わりにストックオプションを与えるという制度を考案しているのは、上記の株主の本音に対応するためである。

「株主様のご心配はごもっともです。そのため、当社は役員について業績連動型の報酬制度やストック・オプション制度の導入を検討しております。特に、業績連動型の報酬制度に関しては、株価に連動させる方法もありますので、役員が株価を意識する方法としては最適かもしれません。検討を要する事項も多々ございますので、しばらくお時間をいただきたく、ご理解をお願いいたします。」

(文責 鳥飼重和)-2003.6.10

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鳥飼 重和

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