平成15年株主総会 第11回 質疑応答の実際 その3

第11回 質疑応答の実際 その3

質問5
連続して赤字なのに、退職する役員に退職慰労金を支払うのはいかがなものか

 なかなか、つらい質問である。特に、赤字幅が大きく、株価が低迷している会社では、株主が損失を被っているのに、退職慰労金を支給するとは何事か、と感情的に許せないのである。

 そのために、赤字幅と株価を考慮して、退職慰労金贈呈の件を当期の議案から外している例もある。来期以降に黒字化してから、改めて、退職慰労金贈呈の件を上程しようというのである。

 しかし、当期に退職慰労金贈呈の件を上程した会社では、質問に回答する必要がある。その場合には、次のように回答するのも一法である。

「株主様の立場からすれば、連続して赤字を出しているのに、その責任も取らずに退職慰労金を受け取る役員がいることは納得できないと思われることでしょう。
 しかし、ここは是非、冷静に考えていただきたいのです。

 私ども役員は、会社の価値を最大化するために最善の努力をしております。この努力の対価として報酬をいただいております。

 私どもの努力したとしても、その結果としては、会社が黒字になる場合もあれば、不本意ではありますが赤字になる場合もあります。

 黒字の場合には、報酬の他に、株主様のご了解の上で賞与を頂戴いたします。その際に、退職した役員には退職慰労金を支払うように退職慰労金贈呈の件を上程いたします。

 この場合に、退職慰労金を支払うのは、役員が在任中に会社の価値を最大化する最善の努力をしたことに対し支払われる報酬額が、本来支払われるべき報酬額に比較して小さな額になっているのを、退職時に調整しようとするためです。

  日本企業は慣習的に役員も従業員も報酬・給与面ではそれほど差をつけないようにした平等な組織を作ってきました。そのために、役員の報酬がその働きに対し不十分になったのです。その調整の役割を退職慰労金が担ったのです。

 会社が赤字の場合には、役員は賞与をいただかないことで責任を取るのが筋になります。それでも不十分と感じられる場合には、本来は働きの対価でありますから、減額する必要のない報酬を減額しております。

 株主様もご理解いただけるように、社会一般では、提供済みの労務の対価は返還することはありえないのです。ところが、私ども役員は、提供した労務の対価の一部を頂戴しないのです。

 それは赤字の責任を重く受け止めた結果です。金銭面では、これ以上に、役員に責任を求めるのは酷というものです。この点をご理解いただきたいのです。

 したがって、赤字であったとしても、過去の役員の働きに対する対価として不十分な点を退職慰労金で調整させていただくことはお認めをいただきたくお願いする次第です。」

(文責 鳥飼重和)-2003.6.10

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鳥飼 重和

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