平成15年株主総会 第13回 質疑応答の実際 その5

第13回 質疑応答の実際 その5

質問8
当社は株主優待をまったくしていないが、低株価の中で投資家の関心が株主優待にもむいていることを考えると、株主優待を考慮しても良いのではないか。

 株主に対する利益還元は、本来、業績を向上させて株価を上昇させること、あるいは、株価が低いときには自社株を取得して株価を上げること、配当金額を増額することによる。

 しかし、株主の中には、株主優待に期待して株主になったり、株主であり続ける者も少なくない。一般株主にはその傾向がある。

 遊園地を経営する会社の株主であることを誇りにし、その会社からの株主優待券を楽しみにしている株主もいる。レストラン経営の会社の株主として株主優待券を利用して1年に一回、家族を食事に誘うのを楽しみにしている老齢の株主もいる。

 家族から離れて生活している老齢者からすれば、株主優待券の利用が息子・娘や孫に会えるチャンスを作ってくれている面がある。

 こういう株主は生涯株主であり続けれくれる安定株主となる。1400兆円の資産の大半を持つ個人はこのような老齢者である。そうであれば、株主優待は多くの安定株主を得るカードといえる。

 その意味では、株主優待を軽く見るべきではない。当社は部品メーカーだから、当社の製品に株主優待の対象となるものはない、と株主優待が自社製品でないといけないと思っている会社がある。

 そう厳格に考える必要はない。株主が喜んでくれるものはすべて株主優待の対象になる。むしろ、株主優待として株主に喜ばれる製品や商品を持たない会社のほうが、株主に喜ばれる株主優待を選択できるともいえる。

「株主様のご要望があることは承知しておりますので、株主優待について、検討をいたしております。」

 質疑応答の考え方を具体例で示してきたが、本当はもっと多くの例を取り上げるつもりでいたが、6月総会のリハーサルも終盤に入るので、今回を持って終了としたい。

 質疑応答で大切なのは、回答する議長・答弁担当役員が質問に対する回答を通して、会社あるいは経営者の「姿勢」を示すことである。

 この回答の姿勢を一般株主は見るために株主総会にわざわざ来るのである。そうであれば、上手な話し振りよりは誠実な話し方が望ましいことも理解できよう。

 株主総会で重視すべきは、投資家である株主の視点から、質疑応答のあり方を考えることである。一般的な言い方をすれば、「相手の立場に立つ」ことである。株主総会でも、この当たり前のことを考える時代になったのである。

 最後に、総会担当者の方は、いま、大変でお疲れであろうと思いますが、各自のご検討をお祈りします。

(文責 鳥飼重和)-2003.6.18

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鳥飼 重和

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