平成15年株主総会 第14回 決議取消訴訟・株主代表訴訟に注意

第14回 決議取消訴訟・株主代表訴訟に注意

 明日26日と明後日27日が6月総会の集中度が高い日である。そこで、最後に、株主総会の運営法で注意をしたい。

 最近の報道で、東京スタイルの株主総会との関係で、決議取消訴訟と株主代表訴訟の可能性が指摘されたからである。

 東京スタイルの株主総会で、議長が、株主の発言を途中で切ったこと、あるいは、株主が発言要求をしているのを無視して発言の機会を与えなかったことを理由に、村上ファンド側が決議取消訴訟を起こすようである。

 株主総会の運営が適法になされるのは株主総会の最小限の目的である。そのためには、特に、株主総会の運営で注意すべきは2点である。

 1つは、株主に株主総会における発言の機会を与えることである。2つは、議案との関係で株主の質問に対し説明義務を尽くした回答をすることである。

 今回の東京スタイルの株主総会で問題となったのは、株主に発言の機会を与えたかである。

 東京スタイルには、株主から見て問題視してもおかしくない点はあったのであるから、株主の発言がまともなものであれば、発言の機会をある程度与えるべきことを株主総会の運営指針とすべきであったろう。

 東京スタイルの株主総会の実情を知らない以上、決議取消の可能性に触れることは出来ないけれども、一般株主から見て問題がある企業の株主総会では、株主総会の時間にあまりこだわらずに、株主に十分発言の機会を保障する必要がある。

 議長経験の長い社長等は、従来型の短い時間で株主総会を終えるのが潜在意識で常識化している可能性がある。しかし、時代は変わったのである。そのことを総会担当者は議長に進言しなければならない。

 いずれにしても、株主総会の運営は、会社主導とはいえ、株主に発言の機会を十分与えることが重要である。

 さらに、株主総会は株主代表訴訟の引き金になるものであることを認識すべきである。過去の株主代表訴訟の研究をすれば、この点は明白である。

 特に、株主が株主総会で質問したことに対し、議長・答弁担当役員の答弁が逃げの姿勢であり、不祥事等の問題に関して実態が不明なままである場合に、株主は株主代表訴訟を提起する場合が多い。

 今回の東京スタイルでは、取締役会の決議を経ないで巨額の有価証券投資を行い数十億円の損失を出した点が、取締役の会社に対する債務不履行責任であるというのが株主の提訴請求の内容のようである。

 このような取締役の責任追及の背景は分からないが、少なくとも、安定株主対策によって株主提案を粉砕した敵対的対応が契機となったのかもしれない。

 東京スタイルの取締役に法的責任があるかどうかは、局外者が云々しても始まらないが、少なくとも、株主総会の運営に十分な配慮を怠れば、株主代表訴訟の契機を作ることの確認はしておくべきである。

 株主総会は株主を重視した懐の深い、柔軟な運営が望ましい。「数十分あるいは1時間、株主総会の時間が延びること」と「決議取消訴訟・株主代表訴訟の可能性」といずれを重視するかが問われているのである。

(文責 鳥飼重和)-2003.6.25

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