平成15年株主総会 株主総会の新しい動き その1 個別上程個別審議方式の見直しの必要性
その1 個別上程個別審議方式の見直しの必要性
今年の東京スタイルの株主総会に関して、決議取消訴訟が提起された。その原因の一つに、株主総会の審議方式があったかもしれない。
報道によれば、東京スタイルの株主総会は個別上程個別審議方式であったようである。つまり、報告事項、各議案ごとに審議の場を個別に区切る総会運営法である。
例えば、議案数が5あれば、報告事項の質疑、第1号議案の上程・審議・採決、第2号議案の上程・審議・採決、第3号議案の上程・審議・採決、第4号議案の上程・審議・採決、第5号議案の上程・審議・採決と、計6つの審議の場を設けることになる。
この6つの審議の場において、同一の株主がそれぞれ質問権を持つ。しかも、その株主が質問を希望すれば、何らかの合理的理由がなければ、質問の機会を与えなければならない。
したがって、理論的に考えると、5人の株主が各審議の場で必ず質問をしようとすれば、5人×6回=30人が質問できることになる。
特に、議案に関する質問希望がある場合に、その株主に質問の機会を与えない場合には、原則的に当該議案に関し、決議取消の可能性が生じる。
また、議案に関する質問があり、それに対して取締役等に説明義務がある場合に、説明義務を懈怠した場合にも当該議案の決議取消の可能性が生じる。
そうだとすると、質問をする株主が増え、加えて、議案の数も増えている状況では、個別上程個別審議で総会運営をすることは、決議取消の危険が増加していると捉えるべきである。
さらに、外国人投資家、厚生年金基金等のように、一定の基準で各議案ごとに賛否を決めることが多くなると、問題議案に関しては株主から厳しい質問が多数出される可能性がある。
従来、個別上程個別審議が多数の会社の総会運営方法であったが、それでも問題がなかったのは、株主の質問がなかったか、少なかったからである。
特に、株主の質問は、報告事項に集中する傾向があり、議案に関するものが少なかった。そのため、この運営方法での危険性が露呈しなかったからでもある。
加えて、一般株主は自分の質問がどの審議の場ですべきものかを理解しないことも多い。そのため、実際にあることであるが、第5号議案の審議の場ですべき質問を報告事項の質疑の場でしたりする。
出席株主が少ない総会であれば、その株主に、今の質問を第5号議案の時にもう一度して欲しいと議長が議事整理することも出来る。
しかし、出席株主の多い総会では、そうも行かず、報告事項の質疑の場で、第5号議案に関する質問を受けたら、回答は第5号議案の審議に入ってからするというように議長に議事整理してもらうしかない場合もある。
このような場合には、株主総会運営に通暁している弁護士か、総務担当者が事務局にいればよいが、そうでない場合には慌ててしまい、混乱に陥る場合がある。
以上のように、今後の株主総会運営を考える場合には、個別上程個別審議方式が当たり前だ、あるいは、前例であるからという理由で維持される場合には、法的リスクが生じることを念頭に置くべきである。
(文責 鳥飼重和)-2003.7.15
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