平成15年株主総会 株主総会の新しい動き その4 株主提案
その4 株主提案
株主提案が日本にも定着する可能性が出てきた。
アメリカでは、株主提案が賛成多数で可決される場合があるが、日本では、そこまで行っていない。
しかし、株主提案をおかしなものと捉える傾向はなくなりつつある。ある意味では、株主提案が市民権を得る時期はそう遠くないのかもしれない。
従来、株主提案がまともでないと受け止められていた背景には、株式の相互持合い構造があった。経営に対して嘴を入れるのはメインバンクであって、株主ではないというのが経営常識だったからである。
しかし、株式の相互持合い構造は確実に崩壊しつつある。そのために、株主が経営者に対し嘴を入れることはガバナンスとして当然視される傾向にある。経営常識が変化しているのである。
その結果、株主のガバナンス力が強まれば、株主利益の向上を求める株主が経営者に対し、株主提案という形のガバナンスをしてくるのは自然なことである。
特に最近、厚生年金基金が議決権行使の基準を立てて、会社提案の議案についての賛否を分けるようになっている。本来、受託者に対しその利益を確保すべき機関投資家はそうあるべきであろう。
日本が本当の自由競争社会になり、法的ルールを重視するのが常識化すれば、日本でも、機関投資家に対する受託者責任を追及する傾向が出てくると思われる。
そうすれば、機関投資家全体の傾向として、受託者責任を追及されないように、株主提案を、実質株主である委託者の利益の面から真剣に検討することになろう。
現状の日本では、さまざまな関係が法的に捉えられていない。
それは、客観的には法的責任が発生していても、和の民族である日本人の社会では、紛争を前提とする法的責任の追及をしないのが常識だからである。
しかし、法律ルールを前提に成り立つ自由競争社会が到来し、そのための司法改革が行なわれていることを考えると、日本社会も程度の問題はあるが、法的な社会に移る可能性が高い。
そうなれば、法的責任の発生があれば、今までとは比較にならないほどに、その責任の追及の可能性が高まる。
その文脈で考えれば、機関投資家は今から真剣に受託者責任を自覚して、委託者の利益を図る行動を取ることを検討すべき時期は近づいているといえよう。
そうだとすれば、将来は株主提案が常に否決されるということは考えられなくなる。会社はこのような将来を見据えて、これに対処できるように考えておくことも必要である。
(文責 鳥飼重和)-2003.08.04
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