経営者に必須の法務・財務 経営者が知るべき改正商法[3]
金庫株は企業防衛に使えるか
日本的経営の基盤であった株式の相互持合構造が崩壊過程に入った。持ち合い株の評価が時価会計によることになったから、株式の相互持合構造の崩壊はもっと進む。このため、持ち合い株の持ち合い解消売りが大量に出ることに対処する必要がある。
従来の商法では、自己株式の取得はいろいろな弊害があるとされ、原則禁止されていた。しかし、それらの弊害も除去できないことも無いので、相互持合株式の解消売りに対処するために、商法を改正して、自己株式の買い受けを自由にした。しかも、自己株式の保有期間に制限を設けないことになったので、金庫株とも呼ばれることになった。
この金庫株は、敵対的買収・TOBがあったときに、企業防衛手段として利用できるのか。企業が大量に保有している金庫株を、企業に友好的な者に譲渡できれば企業防衛はできる。しかし、今回の改正商法では、企業が金庫株を処分するには、新株発行の手続に準じた手続が必要になった。
この手続によれば、企業が友好的な者に金庫株を割り当てると、新株発行の差し止めに準じた差し止めがなされることになり、従来の判例からすれば、結局は、金庫株の割り当ては困難になる可能性が高いのである。金庫株制度は、敵対的な買収・TOBへの対処は困難であることを教えた。
そうであれば、企業防衛は敵対的買収・TOBに対して、事前の対策をとるしかないことになる。ある意味での、安定株主対策が戦略的に必要になるのである。従来、60%ぐらいを相互持合株が占めていたのであり、その多くが解消される可能性があるのであるから、それに替わる新たな安定株主が必要となる。
株主構成を成り行きに任せるのではなく、会社の方から戦略的に株主構成を考えて、長期的視野でその株主構成を作り上げていくことが必要である。その一環として、一般株主の株主構成の割合を規定し、その増加のために長期的戦略を採るべきである。とくに、一般株主が来る株主総会の重要性は増加する。今後はいかに一般株主に株主総会に来て貰うかの方向で株主総会の見直しが必要となろう。
(文責 鳥飼重和)
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