経営者に必須の法務・財務 経営者が知るべき改正商法[7]

 新株予約権

 新株予約権は、ある会社の株式を予め定められた一定の価額で取得できる権利である。これは、改正商法が、一般的に株式のコール(買い)オプションの発行を認めたのである。このことによって、経営者は、会社の将来性という夢を大いに活用し、新株予約権を利用して様々の経営課題を解決できる。

 特に、新株予約権を付与する対象が限定されなかったことから、会社の経営資源であるヒト・モノ・カネ・情報等を効果的に取得できるようになった。経営資源が取得できるか否かは、当該経営資源に影響力を行使できる「人」に当該会社の新株予約権の魅力を感じさせられるかにかかっている。

 例えば、ある企業が公開準備をしている際に、公開を確実にするために収益をもう一段上昇させたいと考えて、実績のある経営コンサルタントにコンサルの依頼をしたいと考えているとする。

 通常、このコンサルタントにコンサルを依頼するときには、10億円かかるとする。それだけの金銭を用意できない場合には、諦めなければならないことになる。しかし、このコンサルタントがコンサルを依頼しようとする会社の将来性を信頼した場合には、この会社の将来性を仮託した「新株予約権」に魅力を感じるかもしれない。

 その場合には、会社は用意できる1億円の支払いとともに、当該会社の新株予約権をその経営コンサルタントに付与することで、コンサルをしてもらえる。その意味では、新株予約権は、通常金銭だけでは不可能であった経営コンサルという経営資源を取得可能にする手段である。

 他方、経営コンサルタントのほうは、通常であれば確実に10億円を取得できるに過ぎない。しかし、新株予約権の付与を受けて当該会社のコンサルを引き受け、その結果、コンサルの成功で当該会社の収益が向上し、公開が成功し、その後も成長を続けることができ、株価が大幅に上昇した場合は、どうであろうか。

 経営コンサルタントが行使時期の到来によって新株予約権を行使する場合の経済的利益は、当該企業の株価上昇の程度によるが、20億円であったり、30億円であったりすることは当然考えられる。これは、新株予約権が「夢」を媒介にして、経営資源を持つ人を動かすことができる証拠である。

 次回には、別の経営資源に関する話をしたい。
(文責 鳥飼重和)

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