経営者に必須の法務・財務 親会社経営者と子会社経営者の報酬の多寡
親会社の経営者は子会社の経営者より、グループ上の地位が高いと考えるのが常識である。親会社は子会社より地位が上であり、親会社のために、子会社があると考える。
その結果、親会社の単独決算が悪くなりそうなときには、親会社から子会社への売り上げが立ち、子会社は親会社からの製品・商品等を在庫とする。
また、かつての山一證券等のように、親会社の巨額の損失や債務を連結外しをした子会社に移転する。あるいは、親会社の人事の調整として、子会社の代表取締役の地位を利用する。
他方、子会社の方も、親会社のために存在するため、赤字を出しても親会社が面倒を見てくれたし、どんなに経営成績を上げても、親会社の役員や従業員以上に報酬やボーナスをもらえなかったので、子会社の収益向上に熱心になる必然性がなかった。
かくして、従来の大方の日本企業におけるグループ経営は、グループ全体の経営効率は高くなかった。すなわち、連結の利益が親会社の利益を大幅に上回ることは少なかった。
しかし、本当の連結経営とは、決算を一緒にするという意味を超えて、グループ企業の最大利益の獲得のために、グループ全体の経営資源を最適に配分することが中核となる。
そうであれば、親会社と子会社との間に、上下関係はなく、グループの経営資源の最適の配分のための役割分担をするパートナーという位置づけが正しいことになる。
グループの最大利益を実現するには、グループ内における各企業の経営者の役割は重要であり、そのインセンティブを高めるために、業績を上げた経営者には、たとえ、その経営者が子会社の経営者であろうとも、業績いかんによっては、親会社経営者よりも高い報酬と賞与、あるいは、ストックオプションを与えるべきである。
グループ内において、親会社、子会社の別もなく、公正な人事ないし報酬評価基準を立て、その公平な適用をすることが、今後のグループ経営の基本でなければならない。
そうすれば、時間の経過とともに、親会社・子会社の経営者の中から、自然に優れたプロと呼ぶべき経営者群が育つと思われる。その中から、人格の公正な者を親会社の経営トップに据えれば、そのグループの将来性は万全である。これが新しい日本的経営ではないだろうか。この新しい常識に従わなければ、そのグループ企業の将来性は期待できないのではないか。
(文責 鳥飼重和)
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