経営者に必須の法務・財務 日本企業の再生モデル

 最近、財務省財務総合政策研究所から「進展するコーポレート・ガバナンス改革と日本企業の再生」という研究レポートが出された。

 その研究レポートの結論として、コーポレート・ガバナンスにおける日本企業の再生モデルが提起された。興味深いので取り上げた。
 まず、このレポートの提起する日本企業の再生モデルを取り上げる。結局は、次の3つに集約される。

 1つは、長期雇用の維持。
 2つは、成果主義的賃金の導入。
 3つは、積極的な情報公開。

 上記モデルの基礎は、上場企業・店頭企業2577社を対象とした調査結果(回答は876社)である。

1 それによると、長期雇用を維持しようとしつつ、他方で、年功賃金体系を成果主義的賃金体系に変えようと努力している会社は、改革に積極的であり、業績も良いという結果が出ている。

2 さらに、情報公開に積極的な取り組みをしている会社は、業績のよいことと有意な強い関係があるようである。

 積極的な情報公開により透明度の高い経営をすると、経営者は一種のコミットメントをしたと同じ状態になり、経営監視を常に意識した経営をするから、業績向上に真剣に取り組むからであろうか。

 日産のゴーン社長が実行したように経営者がコミットメントをすることは経営監視を容認するものであり、業績を高めることは確かであろう。

 提起された日本企業の再生モデルは、上記1および2の組み合わせで作られたものである。それぞれ、業績向上とつながりのある統計結果を利用したものである。

 長期雇用の維持は、日本的企業の特色であるが、有形の資産のない日本が世界的企業を多数生み出したのは、人的資源の優秀さと勤勉さと忠誠心とによるといえるからであろう。

 株主利益を重視する経営をしようとした場合、業績を上がるのも結局は優秀で忠実な従業員の意欲と勤勉さにかかっていることは否定できない。

 従業員に忠誠心と勤勉さを維持してもらうには、会社が従業員に将来の安心を与えるために、長期的雇用の維持を約束する必要がある。将来に不安を与えている会社が従業員に忠誠心と勤勉さを求めることは無理だからである。

 その上で、年功序列であれば、優秀な従業員が安い賃金だということになり、優秀さを発揮する意欲を失う。これに対処するのが、成果主義的賃金体系である。

 この成果主義により賃金格差は、従来のよう日本のわずかである必要はないが、比較的平等主義が強い日本の国柄を考えると、アメリカほど極端な格差をつけるのは問題があろう。

 この格差にも、差をつけられる従業員の許容する範囲があり、それが格差の限界となろう。それを超える格差は、従業員全体の意欲を失いかねないのである。

 新しい日本企業の再生モデルは、参考にすべき点がある。
(文責 鳥飼重和)-2003.7.15

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鳥飼 重和

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