会社法QA 第4回 株主総会の招集手続

 ※ 本連載は平成17年に「新会社法QA」として掲載された内容です。その後の改正はこちらをご覧ください。

【テーマ】 株主総会の招集手続

【解説】
1 株主総会はどこでも開催が可能になります。
 現行法上、株主総会の招集地は、定款で定めている場合はその定めに従い、定款に定めがなければ、本店の所在地またはそれに隣接する地となっていますが、新会社法では、招集地はどこでもよくなります。したがって、株主の利便性などを考えて、招集地を自由に決めることができるようになります。ただし、現在定款によって招集地を定めている場合には、定款の規定に従うことになります。また、どこでも開催が可能とはいえ、株主の出席が著しく困難になるような場所を招集地にした場合には、総会決議の取消事由(会社法831条1項1号)に該当するおそれがありますので、注意が必要です。

2 電子投票制度を採用している会社は、議決権行使書面の交付が不要になります。
 現行法では、書面投票制度が義務付けられる会社は、電子投票制度を利用しても、議決権行使書面を株主に交付しなければなりませんでしたが(商法特例法21条の3第2項)、新会社法においては、議決権行使書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供すれば、株主から請求がない限り、議決権行使書面の交付が不要になります(会社法301条2項)。そこで、現行法のように、電子投票制度を採用しても、議決権行使書面を印刷して交付しなければならないという手間を省くことができるようになります。なお、新会社法においては、議決権を有する株主が千人以上いる場合には、書面投票制度が義務付けられています(会社法298条2項)。

3 少数株主による株主提案権の行使期限を定款で短縮できるようになります。
 現行法では、少数株主による株主提案権の行使は、総会会日の8週間前までに行わなければならなくなっていますが(商法232条ノ2第1項・2項)、新会社法においては、少数株主による株主提案権の行使期限を定款によって8週間より短縮することができるようになります(会社法303条1項、305条1項)。

4 総会招集手続等に関する検査役の選任を株式会社も請求できるようになります。
 現行法では、株主総会の招集手続及び決議の方法を調査させるために検査役の選任を請求できるのは、一定の要件を満たした株主に限られていましたが(商法237条ノ2第1項)、新会社法では、株式会社も請求ができるようになります(会社法306条1項)。

【質問】
 当社は、3月期決算の会社です。当社では、会社法が施行される前に、株主総会の日時と場所だけ取締役会で決めておこうと思っています。なお、議案の決定や招集通知の発送は会社法施行後になる予定です。その場合、現行法が適用されると考えてよいですか?

【選択肢】
[1] 会社法施行後に招集通知を送る以上、新会社法が適用される。
[2] 株主総会の議案などが取締役会で決議されていない以上、新会社法が適用される。
[3] 会社法施行前に株主総会の日時、場所が取締役会で決定していれば、現行法が適用される。

【正解】 [3]

【解説】
1 「招集の手続が開始された場合」
 株主総会の権限及び手続については、「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(以下「整備法」といいます。)90条において、「施行日前に株主総会…の招集の手続が開始された場合」には、「なお従前の例による」すなわち現行法が適用されると規定されています。そこで、株主総会の招集手続がいつ開始されたかが、株主総会の権限及び手続について、現行法が適用されるか、会社法が適用されるかの分かれ目となります。
では、招集の手続が開始されたといえるのはいつでしょうか。この点については、従来、招集手続の開始とは、株主に対して招集通知を発送することであるという見解が一般的であったようです。しかし、立法担当者の解説によれば、今回の改正において、整備法90条の「招集の手続が開始された場合」というのは、株主総会招集決定の取締役会決議がなされた場合、という解釈がなされています。そして、株主総会招集決定の取締役会決議というのは、議題など詳細が定まっていなくとも、日時程度で構わないとされています。したがって、会社法施行日より前に、少なくとも株主総会の日時を定めて株主総会の招集を取締役会で決定しておけば、現行法が適用されることになります。
 なお、会社法施行日以降、株主総会の日時を定めた取締役会の決定を撤回し、改めて日時、場所、議題等株主総会招集に関する決議を行えば、会社法が適用されることになります。

2 【質問】の場合
 【質問】の場合、会社法施行前に株主総会の日時と場所だけ取締役会で決めておいたとしても、整備法90条の「施行日前に株主総会…の招集の手続が開始された場合」に該当するので、現行法が適用されることになります。

 

※ 本記事は平成17年に「新会社法QA」として掲載されたものです。その後の法改正はこちらをご覧ください。

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