会社法QA 第5回 株主総会の招集通知

 ※ 本連載は平成17年に「新会社法QA」として掲載された内容です。その後の改正はこちらをご覧ください。

【テーマ】 株主総会の招集通知

【解説】
1 招集通知の記載事項
 現行商法では、取締役会が株主総会の招集決定をする旨が規定されているのみですが、会社法では取締役会が招集決定をする際の決定事項を法定しています。具体的には、[1]株主総会の日時・場所、[2]株主総会の目的事項、[3]書面投票ができるときは、その旨、[4]電子投票ができるときは、その旨、[5]法務省令で定める事項、です(会社法298条1項)。[5]の決定事項は、会社法施行規則63条で定められています。
 そして、招集通知に、これらの決定事項を記載(記録)することが要求されています(会社法299条4項)。

2 招集通知の添付書類
 取締役会設置会社では、定時株主総会の招集に際して、[1]計算書類、[2]事業報告([3]監査報告、[4]会計監査報告を含む)を、株主に対して提供する必要があります(会社法437条)。会計監査人設置会社が、取締役会設置会社である場合には、さらに、連結計算書類を株主に提供しなければなりません(会社法444条6項)。

3 株主総会参考書類・議決権行使書面
 書面投票ができる場合には、原則として、招集通知の際に株主に対し、株主総会参考書類及び議決権行使書面を交付しなければなりません(会社法301条1項)

4 WEB開示制度
 WEB開示制度とは、定款の定めにより、株主総会の招集通知とともに株主に提供すべき資料の一部の事項をホームページに掲載し、かつ、そのホームページのアドレスを株主に通知することにより、それらの事項が株主に提供されたものとみなす制度です(会社法施行規則94条・133条3項、会社計算規則161条4項・162条4項)。株主に対する書面の提供を物理的に省略することができますので、株主総会の招集のための費用(印刷費用・発送費用等)を削減することが可能です。
 WEB開示制度の対象となるのは、株主総会参考書類及び事業報告のうちの一定事項、ならびに個別注記表及び連結計算書類の全部です。
 WEB開示は、招集通知を発出した時から開示を開始し、株主総会の日から3ヶ月を経過する日までの間、継続して開示することとされています。

【質問】
 当社は3月決算の会社です。招集費用の節約のために、WEB開示制度を利用しようと思いますが、本年6月の定時株主総会の招集手続で利用できますか。

【選択肢】
[1] 会社法施行後に招集手続を開始する場合には、当然、利用できる。
[2] 定款変更が必要なので、本年6月の定時株主総会では絶対に利用できない。
[3] 定款変更が必要だが、本年6月の定時株主総会で利用できる場合もある。

【正解】 [3]

【解説】
1 WEB開示制度を利用するための条件
 WEB開示制度は、会社法施行規則および会社計算規則により設けられた制度です。
 したがって、そもそも会社法施行規則および会社計算規則の適用がなければ、WEB開示制度は利用できません。
 平成18年6月の定時株主総会の手続に会社法が適用されるかどうかは、会社法施行日前に招集手続が開始されたかどうかが基準となります(整備法90条)。会社法施行日後に招集手続が開始された場合には、会社法が適用されます。
 しかし、WEB開示制度は、会社法・会社法施行規則・会社計算規則の適用があれば当然に利用できるというものではありません。
 WEB開示制度を利用することができるのは、WEB開示の措置をとる旨の定款の定めがある場合に限られます(会社法施行規則94条1項ただし書き・133条3項ただし書き、会社計算規則161条4項ただし書き・162条4項ただし書き)。

2 【質問】の場合
 WEB開示制度を利用するには、株主総会で定款変更の決議をとり、WEB開示の措置をとる旨の定款の定めを新設する必要があります。
 したがって、多くの企業が、平成18年6月の定時株主総会でWEB開示の措置をとる旨の定款の定めを新設するものと予想されます。そのような企業では、平成18年6月の定時株主総会でWEB開示制度を利用することはできません。
 しかし、定時株主総会でなければ定款変更ができないということはありません。
 定時株主総会の前に臨時株主総会を開催して、WEB開示の措置をとる旨の定款の定めを新設することも可能です。この場合には、平成18年6月の定時株主総会でWEB開示制度を利用できることになります。
 「本年6月の定時株主総会では絶対に利用できない」というわけではありませんので、正解は[3]になります。

3 実務上の留意点
 株主総会参考書類および事業報告による開示事項のうち、会社法の規定により増加した事項については、会社法施行後最初に開催される株主総会までは適用しないとの経過措置が設けられています(会社法施行規則5条・6条)。
 WEB開示制度を利用するには定款の定めが必要ですが、その定款の定めを設けることが可能な最初の株主総会までは、増加した事項の開示を猶予する趣旨です。
 したがって、平成18年6月の定時株主総会でWEB開示制度が利用できないとしても、負担感としては従前と変わりはありません。
 ただし注意が必要なのは、猶予期間は「会社法施行後最初に開催される株主総会まで」であって、「定時株主総会まで」とされているわけではないことです。
 たとえば12月決算の企業の場合、平成19年3月に定時株主総会を開催することになりますが、会社法施行後定時株主総会の前に臨時株主総会を開催する必要に迫られることも考えられます。
 この場合、会社法で増加した開示事項を開示しなくてもよい猶予期間は臨時株主総会まで、ということになります。この臨時株主総会でWEB開示の措置をとる旨の定款の定めを新設しておかないと、平成19年3月の定時株主総会では、会社法で開示が要求されている事項をすべて書面で株主に提供することにならざるを得ません。
 招集手続費用の節約を考えるのであれば、定時株主総会か臨時株主総会かを問わず、会社法施行後最初に行われる株主総会では、WEB開示の措置をとる旨の定款の定めを新設することを忘れないようにする必要があります。

 

※ 本記事は平成17年に「新会社法QA」として掲載されたものです。その後の法改正についてはこちらをご覧ください。

※ 連載全記事にはこちらからアクセスできます。

 

関連するコラム