会社法QA 第17回 監査役の兼任禁止・社外監査役の要件
※ 本連載は平成17年に「新会社法QA」として掲載された内容です。その後の改正につきましては、こちらをご覧ください。
【テーマ】 監査役の兼任禁止・社外監査役の要件
【解説】
1 監査役の兼任禁止
監査役は、株式会社・その子会社の取締役・支配人その他の使用人、または子会社の会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)・執行役を兼ねることができません(会社法335条2項)。
また、会計参与の欠格事由の1つとして、当該株式会社の監査役であることが規定され(会社法333条3項1号)、監査役と会計参与の兼任も禁止されています。
このような子会社の取締役等との兼任禁止は、(会計参与との兼任禁止を除き)旧商法でも規定されており(旧商法276条)、原則として、兼任禁止の範囲は変更されていません。
しかし、会社法では「子会社」の概念を旧商法よりも拡大しています(会社法2条3号)。そのため、旧商法上は「子会社」にあてはまらなかった会社が、会社法施行後は「子会社」に該当することになる場合もあります。
そのような場合に備えて経過措置が設けられており、当該監査役の任期が終了するまでの間は、当該子会社の取締役等を兼ねることができます(会社法施行規則附則2条3項)。
2 社外監査役の要件
社外監査役とは、株式会社の監査役であって、過去に当該株式会社またはその子会社の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)、執行役または支配人その他の使用人となったことがないものをいいます(会社法2条16号)。
過去に1度でも株式会社またはその子会社の取締役等になったことがあると、社外性を有しないことになります。
そのため、会社法施行日前において「子会社」の取締役等であったかどうかを判断する必要がありますが、そのような場合には、会社法における子会社ではなく、旧商法における子会社(形式子会社)の取締役等であったかどうかという基準で判断するものとされています(会社法施行規則附則2条5項)。
【質問】
(1) 当社の子会社の1つに合同会社がありますが、その子会社の業務執行社員を当社の監査役に選任することは可能ですか。
(2) 当社は、一部の事業を新設分割の方法によって切り出そうと考えています。この場合、当社の取締役が新設会社の社外監査役に就任することは可能ですか。
【選択肢】
[1] いずれも可能
[2] いずれも不可能
[3] (1)は可能だが、(2)は不可能
【正解】 [1]
【解説】
1 監査役と子会社の業務執行社員との兼任
(1) 監査役の兼任禁止規定
本文で述べたように、監査役は、株式会社・その子会社の取締役・支配人その他の使用人、または子会社の会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)・執行役を兼ねることができません(会社法335条2項)。
監査役と子会社の取締役や使用人・執行役等との兼任が禁止されている理由は次のようなものです。
すなわち、監査役は、その職務を行うために必要があるときは、子会社に対して事業の報告を求め、またはその子会社の業務および財産の状況を調査することができます(会社法381条3項)。監査役が子会社の取締役や使用人・執行役等を兼ねることを認めると、親会社の監査役としての立場と、調査を受けるべき子会社の業務執行者としての立場を兼ねることになるため、相当ではないからです。
(2) 監査役と持分会社である子会社の業務執行社員との兼任
これに対し、監査役と持分会社である子会社の業務執行社員との兼任については、会社法上、特に規定されていません。
持分会社である子会社の業務執行社員は子会社の出資者ですから、子会社の利益に反して親会社の不正に加担する危険性は乏しいと考えられ、持分会社である子会社の業務執行社員であることを監査役の欠格事由とする必要はないと考えられるためです(相澤哲・葉玉匡美・郡谷大輔編著『論点解説 新・会社法』(2006年、商事法務)397頁~399頁参照)。
したがって、子会社の業務執行社員を親会社の監査役に選任することは可能です。
2 新設分割における分割会社の取締役の社外性
(1) 社外監査役の要件
社外監査役とは、株式会社の監査役であって、過去に「当該株式会社」またはその「子会社」の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)、執行役または支配人その他の使用人となったことがないものをいいます(会社法2条16号)。本文で述べたとおりです。
(2) 分割会社と新設会社の関係
新設分割における新設会社は、分割会社から切り出された形をとりますが、あくまでも新設分割により新たに設立される会社です(会社法763条柱書)。
つまり、分割会社と新設会社とは異なる法人です。
そのため、新設会社の社外監査役の要件を検討するにあたっては、分割会社は「当該株式会社」には該当しません。
また、「親会社」の取締役等であったかどうかは、社外監査役の要件の検討にあたり考慮する必要がありません(相澤・葉玉・郡谷・前掲書402頁~403頁参照)。
したがって、分割会社の取締役が新設会社の社外監査役に就任することは可能です。
よって、正解は①になります。
※ 本記事は平成17年に「新会社法QA」として掲載しましたが、会社法改正に向けた動きとの混同を避けるため、平成24年12月にタイトルから「新」を削除させて頂きました。
平成26年改正を反映した内容につきましては、こちらをご覧ください。
関連するコラム
-
2024.11.15
奈良 正哉
指名委員会は本物に
法定の他に任意の設置も含めて、指名委員会は機能しているようだ。社長後継者の選定議論を行っている割合…
-
2024.11.14
奈良 正哉
KADOKAWAフリーランスいじめの正当化
フリーランスをいじめても担当者の個人的な利益はない。むしろいやな気持で対応してきたのだろう。「悪い…
-
2024.11.11
奈良 正哉
内部通報者への不利益処分に罰則
企業内の不祥事、特に経営者や経営幹部の不正行為を早期に発見するには、内部通報しかないと思っている。…
-
2024.11.01
奈良 正哉
社外取締役兼職
社外取締役の3社以上の兼職が24%に、女性に限れば34%になるそうだ(10月30日日経)。かくいう…