会社法QA 第18回 取締役の解任
※ 本連載は平成17年に「新会社法QA」として掲載された内容です。
その後の改正等を反映したこちらをご参照ください。
【テーマ】 取締役の解任
【解説】
1 解任決議
旧商法では、株式会社は、いつでも、株主総会の特別決議をもって取締役を解任することができるとされていました(旧商法257条2項、257条の3第2項、343条)。また、有限会社は、取締役を普通決議で解任することができるとされていました(旧有限会社法32条)。
これに対して、新会社法では、株式会社全般について、取締役の解任決議の要件を普通決議に緩和するものとしています(会社法341条)。これは、過半数の株主の支持を失った取締役を在任させておくべきでなく、株主の意向を強く反映させる方が効率的であるという考えに基づくものです。ただし、各会社において任意に定款で決議要件を加重することも可能とされています(会社法341条、309条)。
2 取締役解任の具体的手続
取締役会設置会社では、通常、株主総会の招集決定を行なう際に、特定の取締役の解任を議題とする旨を決定することとなります(会社法298条1項2号)。解任については、その議題自体が特定の取締役に関するものとなりますから、招集通知において、いずれの取締役の解任に関する件であるかは通知されます(会社法299条4項)。このことは、会社法施行規則63条7号に解任について規定がないものの、必要なことと考えられています。書面投票を行なう会社は、株主に対して株主総会の招集通知を行うに際して,参考書類に取締役の解任に関する事項を記載し、交付しなければなりません(会社法301条1項)。
会計参与・監査役・会計監査人の場合と異なり、取締役の解任議案が提出された当該株主総会において、解任の対象とされている取締役には意見陳述権がないことには注意が必要です。そして、当該株主総会において、341条の決議により当該議案が可決された場合には、取締役が解任されることとなります。他方、否決されれば取締役は、一切解任されないかというとそうでもありません。後述の取締役解任の訴えがあります。
3 取締役解任の訴え
取締役の職務執行に関して、不正の行為または法令もしくは定款に違反する重大な事実があったにもかかわらず、当該取締役を解任する旨の議案が株主総会において否決されたとき等は、総株主の議決権の3%以上の議決権を6か月前から引き続き保有する株主等は、取締役解任の訴えを提起することができます(会社法854条)。非公開会社の場合は保有期間の要件の適用はありません。役員解任の訴えにおいては、その役員と会社の双方を被告とすることになります(会社法855条)。判決までの間の措置として、職務執行停止・職務代行者選任の仮処分(会社法352条、民事保全法23条2項、24条)があります。
【質問】
当社は、取締役の解任決議の要件を定款で加重することを検討していますが、一定の数以上の株主の賛成を要する旨の要件を定めることは可能ですか。
【選択肢】
[1] 可能
[2] 不可能
[3] どちらともいえない。
【正解】 [2]
【解説】
株主総会の普通決議について、会社法は、その決議要件を、法定の要件に加えて定款によって、一定の数以上の株主の賛成を要する旨を要件として定めること(いわゆる頭数要件の設定)を許容しています(309条1項)。
しかし、取締役の選任決議及び解任決議の要件については、341条において特則が設けられており、当該規定においては、頭数要件の設定は認められていません。
これは、頭数要件の設定のねらいは、主として少数株主保護のためと考えられるところ、取締役の選解任という問題については、既に累積投票制度や種類株主による取締役の選任などの制度が別途設けられており、これらの制度を利用することで少数株主の保護を一定程度図れること、また、頭数要件の付加によってデッドロックに陥るという弊害をできるだけ防止するためです。
従って、取締役解任決議の要件について、定款で頭数要件を付することはできません。
ただ、累積投票により選任された取締役の解任については、本条の適用除外規定が設けられ(会社法342条6項)、この場合は特別決議が必要となり(309条2項7号)、特別決議は定款で一定の数以上の株主の賛成を要する旨の要件を設けることも可能ですので(309条2項柱書後段)、この点は注意が必要です。
以上より、設問のごとく累積投票により選任された取締役に限定しないで、広く取締役解任決議一般について定款で頭数要件を設けることはできません。
正解は[2]です。
※ 本記事は平成17年に「新会社法QA」として掲載されたものです。その後の法改正を反映したあらたな記事をご覧ください。
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