会社法QA 第22回 株主優待制度

 ※ 本連載は平成17年に「新会社法QA」として掲載された内容です。その後の改正はこちらをご覧ください。

【テーマ】 株主優待制度

【解説】
1 株主平等原則
 旧商法下において、一般に、株式会社について、株主は、その権利・義務に関し持株数に応じて比例平等的に取り扱われなければならない原則(株主平等の原則)が妥当するとされ、旧商法は明文の規定を欠くものの、旧商法241条1項(一株一議決権の原則)、同法280条の4第1項(株主の新株引受権)、同法293条(利益配当)及び同法425条(残余財産の分配)より当然のこととされていた。株主平等の原則が認められる結果、法が別段の取扱いを認めた場合を除き、それに反する定款・総会・取締役会決議、取締役の業務執行等は無効と考えられていた。
 会社法は、有限会社において認められた社員ごとの格別の定め(旧有限会社法39条)を公開会社以外の株式会社に認めるとともに、種類株式を多様化して、同一種類の株式を有する株主についても株主ごとに異なる扱いをすることさえ許容していることなどから、明文を設けて株主平等原則を規定した(109条1項)。
 株主平等原則の具体的内容は、整理すると二つの内容に分けられる。すなわち、①株式会社は、株主の個性に着目することなく、同じ内容の株式を有する株主については、数のみに着目した取扱いをしなければならない、②株式会社は、株式の内容に応じて平等に取り扱わなければならない、ということである。

2 株主優待制度
 旧商法下において、各会社は、それぞれ工夫をこらした株主優待制度を実施している例があったが、その制度の内容は、必ずしも株式の数に応じて取り扱われているわけではなかった。そのため、株主平等原則との抵触(特に①の内容)が問題となる。
 この点、株主平等原則の①の内容は、株主の保有株式数に応じた比例的取扱いを義務づけるものであると考えると、会社法308条1項、454条3項・504条3項等の個別の規定が別に設けられていることを説明することができなくなってしまう。そこで、株主平等原則の①の内容は、株主の個性に着目することなく、株主の数に着目して合理的な取扱いをすることを要求しているものと解するべきである。
 このような観点から、株主優待制度も、一定の目的を達成するために、株式数に着目して段階的に区別した取扱いをすることに合理性がある場合、109条1項の株主平等原則に違反しないと考えられています。

【質問】
 当社は、旧商法時代から、株主優待制度として、鉄道の無料乗車券を配布しております。新会社法の下でも、個人株主や安定株主を創出するという目的から、同様の株主優待制度を続けたいと思いますが、このような制度は新会社法の下でも当然適法と考えてよいでしょうか。

【選択肢】
[1] 当然適法である。
[2] 当然無効である。
[3] 内容によるので当然適法とはいえない。

【正解】 [3]

【解説】
 テーマの解説でも説明したとおり、株式の数に着目した合理的な内容の株主優待制度である場合には、109条1項に違反するものではありません。
 ただし、設問のごとく、会社の資産を株主に対して交付する類型の株主優待制度については、現物配当(453条以下)や財源規制(461条)に服する配当として扱われる余地があるので、これらの規定に照らして許されるかどうかが問題となります。
 まず、現物配当に関しては、現在行なわれている一般的な内容の株主優待制度は、個人株主作りや自社商品・サービス等の宣伝を目的として、少額の分配をするに過ぎないので、このような内容である限り、株主に対する配当の性格は認められないと思われます。ただし、上記のような目的を超えて多額の無料乗車券を交付することは、実質的な現物配当として違法となるおそれがあります。
 また、財源規制との関係では、無料乗車券の場合、会社は債務を負担するのみで、会社財産の流出ではありませんから、原則として財源規制との関係では問題を生じないと言えそうです。しかし、巷の金券ショップなで容易に換金できる性質の無料乗車券であれば、実質的に財産を分配するものと評価される余地はあります。
 従って、上記検討したところから明らかなとおり、鉄道の無料乗車券を配布する内容の株主優待制度であっても、内容によっては違法となる場合があります。
正解は③です。

※ 本記事は平成17年に「新会社法QA」として掲載しましたが、会社法改正に向けた動きとの混同を避けるため、平成24年12月にタイトルから「新」を削除させて頂きました。その後の改正はこちらの記事をご参照ください。

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