会社法QA 第26回 会計監査人
※ 本連載は平成17年に「新会社法QA」として掲載された内容です。その後の改正はこちらをご覧ください。
【テーマ】 会計監査人
【解説】
1 会計監査人
会計監査人は、旧商法下の説明では、旧商法特例法上の大会社・みなし大会社である株式会社の計算書類・附属明細書につき、会社との契約により委任を受けて監査を行う専門職業人とされており、従来は大会社固有の制度でした。これに対し、会社法は株式会社の機関設計を自由化し、規模の大小を問わず会計監査人を設置するかどうかは定款で自由に定めることができるものとしました(会社法326条2項)。ただし、大会社は、会計監査人を置かなければならないこととされています(会社法328条1項・2項)。
2 資格
会計監査人になれるのは、公認会計士または監査法人のみです(会社法337条1項)。
ただし、上記の資格を有する場合でも、公認会計士法により、会社法435条2項の書類を監査することができない者等一定の場合に該当するときは、会計監査人となれないこととされています(会社法337条3項)。
3 選任・任期・退任
会計監査人は、株主総会の決議によって選任されます(会社法329条1項)。会計監査人の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです(会社法338条1項)。ただし、その定時株主総会において別段の決議がなかったときは、当該定時株主総会で再任されたものとみなされます(同条2項)。会計監査人は、任期満了、辞任、解任、失格等により退任します。
4 報酬
会計監査人の報酬は、会社と会計監査人の契約で決定され、株主総会決議は不要です。
5 職務・権限
会計監査人は、計算書類およびその附属明細書、臨時計算書類ならびに連結計算書類を監査します(会社法396条)。会計監査人は、いつでも会計帳簿および資料の閲覧謄写や、会計に関する報告を求めることができ(会社法396条2項)、また、その職務を行なうため必要があるときは、子会社に対して会計に関する報告を求め、またはその子会社の業務および財産の状況を調査することができます(会社法396条3項)。
6 責任
会計監査人は、その任務を怠ったときは、会社に対して損害賠償責任を負担しますし(会社法423条1項)、これとは別に第三者に対しても損害賠償責任を負うこともあります(会社法429条)。会計監査人の会社に対する責任は株主代表訴訟の対象となることは注意が必要です(会社法847条1項)
【質問】
私は、A監査法人でB会社の会計監査業務を担当している公認会計士ですが、B社の会計監査に必要なため、B社の外国子会社の業務や財産の状況を調査することが必要なことが判明しました。会計監査人のこのような調査権限も会社法で保障されているのでしょうか。
【選択肢】
[1] 保障されている。
[2] 保障されていない。
[3] どちらともいえない。
【正解】 [1]
【解説】
1 外国子会社への調査権
会社法は、会計監査人は、その職務を行なうため必要があるときは、会計監査人設置会社の子会社に対して会計に関する報告を求め、または会計監査人設置会社もしくはその子会社の業務および財産の状況の調査をすることができるとされています(396条3項)。そして、この「子会社」には、施行規則3条3項において規定されているとおり、外国会社等も含まれます。
ただし、会社法は、調査の対象となっている子会社に「正当な理由」があるときは、会計監査人に対する報告または会計監査人の調査を拒むことができるとしており、会計監査人の調査には一定の限界があることを認めています(396条4項)。ここにいう「正当な理由」とは、会計監査人の調査事項が当該子会社が守秘義務を負う事項に関するものである場合等をいい、子会社が外国会社である場合には、子会社の準拠法上、子会社が親会社による調査受忍義務を負わない場合も含まれると解されています。そうだとすると、商法上は、会計監査人の外国子会社への調査権は保障されているものの、当該子会社の設立された国の法律の規定の定め方如何によって、調査の範囲が限定されることもあることになります。
2 【質問】の解答
商法上の保障されているかという点については、「子会社」に外国会社等も含むとされているので、正解は①になります。
(以上、相澤哲=葉玉匡美=郡谷大輔『論点解説 新・会社法』(2006年、商事法務)422頁参照。)
※ 本記事は平成17年に「新会社法QA」として掲載しましたが、会社法改正に向けた動きとの混同を避けるため、平成24年12月にタイトルから「新」を削除しました。その後の改正を反映した内容はこちらをご覧ください。
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