国税OBが緊急寄稿!!所得税法は“生身の人間”を対象 所得税が課税されない所得
第2回 所得税が課税されない所得
所得税法等に規定する所得とは、適法・違法を問わず、個人が稼得した経済的価値の一切をいうのですが、その所得に該当する場合であっても、政策的な見地等から所得税の課税対象としないものがあります。これを非課税所得といっております。非課税所得は、所得税法を初めとする各種の法律の規定に基づくほか、国税庁の通達によって課税しない取扱いをしているものもあります。課税除外とする理由別に、非課税所得の主要なものを掲げてみますと、次のとおりとなります。
1. 社会政策的な配慮に基づくもの
増加恩給及び傷病賜金、業務上の負傷や疾病により労働基準法の規定に基づいて使用者から受ける療養補償等、遺族年金等、介護保険や健康保険の保険給付、雇用保険法の失業給付、生活保護の給付、児童福祉の支給金品、児童手当など
2. 担税力の考慮に基づくもの
生活用動産の譲渡による所得、資力を喪失し債務を弁済することが著しく困難な場合における強制換価等による譲渡所得、学資金、扶養義務者の間で扶養義務を履行するために給付される金品、人身事故により受ける損害賠償金等、物納による譲渡所得など
3. 必要経費的な性格のもの
給与所得者の旅費及び通勤費、職務の性質上欠くことのできない現物給与、国外勤務者の在勤手当など
4. 小額免除又は貯蓄奨励等に基づくもの
小額の現物給与、レクレーション費用等の各種の経済的利益、当座預金の利子、老人等の小額預金の利子等、勤労者財産形成住宅貯蓄等の利子、納税準備預金の利子など
5. 他の租税との二重課税を避けるためのもの
相続・贈与・個人からの贈与により取得する利益
6. その他
文化功労者年金、ノーベル賞等の一定の賞金、公職選挙法による報告がされた選挙運動資金、オリンピック大会における成績優秀者に交付される金品など
なお、非課税所得の計算上損失が生じた場合には、その損失はないものとみなされ、他の所得と損益通算することはできません