国税OBが緊急寄稿!!所得税法は“生身の人間”を対象 損害賠償金を受け取ったとき

第6回 損害賠償金を受け取ったとき

 昨年の9月にニューヨークで同時テロが発生し、世界中を震撼とさせましたが、これほどの大事件ではなくても、現代社会生活においては危険と隣り合わせの毎日です。日常生活や業務上において災難を受け、示談金、慰謝料、損害賠償金などを収受した場合に税金が課せられるのでしょうか。個人が損害賠償金等を受け取った場合、所得税の課税関係は、次のとおりとなります。
イ  心身に加えられた損害につき支払を受ける慰謝料その他の損害賠償金(これに類するものを含みます。)については、所得税が課されません。この場合の損害賠償金等には、その損害に基因して勤務又は業務に従事することができなかったことによる給与又は収益の補償として受けるものも含まれます(所得税法施行令30条1号)。薬害や医療ミスにより支払われる損害賠償金などについては、休業中の収入を補てんする部分を含めて非課税とされます。ただし、その被害者の各種所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補てんするための部分は課税になります(この部分は、ロ及びハについても課税されます)。
ロ  不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払を受ける慰謝料その他の損害賠償金(これに類するものを含みます。)についても、所得税が課せられません。ただし、事業所得等の収入金額に代わる性質を有するものについては、所得税が課されます(所得税法施行令30条2号)。上記のイと異なるのは、損害の原因が特定されていること、及び収益補償が課税される点です。例えば、店舗にトラックが突っ込み、商品や建物の損害賠償金等を受け取った場合はもとより、復旧期間中の休業補償、従業員の給与や一時的に店舗を借りるために支払う賃借料などの補てん部分も課税対象となります。
ハ  心身又は資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金(これに類するものを含みます。)については、事業所得等の収入金額に代わる性質を有するものを除き、所得税が課されません(所得税法施行令30条3号)。
 なお、葬祭料、香典又は災害等の見舞金でその金額がその受贈者の社会的地位、贈与者との関係等に照らし社会通念上相当と認められるものについては、上記の「心身又は資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金」と同様に非課税とされます(所得税基本通達9-23)

関連するコラム