国税OBが緊急寄稿!!所得税法は“生身の人間”を対象 利子所得は分離課税

第19回 利子所得は分離課税

 利子所得は、「公社債及び預貯金の利子並びに合同運用信託、公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託の収益の分配に係る所得をいう」と定義されているように、個人が有する貯蓄資金の運用果実をいうのです。社会通念では、利子と観念される貸付金の利子は利子所得に該当しませんし、公社債の償還差益や相互銀行等が受け入れる定期積金等の給付補填金、抵当証券の利息、一時払養老保険の差益、金投資口座の差益などの金融類似商品の収益についても、経済的な性質は預貯金等の利子と類似しておりますが、利子所得には含まれないことになります。

 そして、利子所得には、必要経費の控除がなく、収入金額がそのまま所得金額とされ、その課税方法は、15%の税率により源泉徴収を行った上で、他の所得と総合して課税するのが所得税法の建前です。このように、利子所得についても、総合課税を建前としているのですが、貯蓄を奨励し資本の蓄積を図る見地から、長い期間にわたって租税特別措置法により、15%(ほかに地方税5%)の税率による一律源泉分離課税の方法が採られております(先に掲げた金融類似商品の収益についても、同様な課税方法が採られております)。現在、総合課税の対象とされる利子所得は、国外の金融機関等に預けた預貯金等の利子や世銀債の利子など、源泉徴収とされないものなどに限られているのです。

 ところで、利子所得について必要経費の控除が認められていないこと、あるいは一律源泉分離課税とされていることについては、立法論として問題がないわけでもありません。利子所得は、個人の貯蓄資金の運用果実であり、借金をして貯蓄に回すとか、金融機関が破綻するなどはあまりないと考えられることから、収入金額そのものを所得としているのです。しかしながら、近年は、MMF(マネー・マーケット・ファンド)の元本割れやマイカル社の破綻など、債権や投資信託についても、貸し倒れのリスクが生じております。また、本年4月からは、ペイオフが解禁となり、金融機関が破綻した場合には、預貯金等のうち、1,000万円を越える部分の一部がカットされることにもなりました。それでなくても、定期預金の利息をバスに乗って受取りに行ったところ、預金利息よりもバス代の方が高いという低金利時代の今日、利子所得に必要経費の控除を認めなくても良いのか、預金元本等の損失を他の金融資産の利益と通算しなくても良いのかなど、いろいろな議論があろうかと思います。今後の税制改正論議が注目されます。