国税OBが緊急寄稿!!所得税法は“生身の人間”を対象 配当所得の原則は総合課税
第21回 配当所得の原則は総合課税
配当所得とは、法人から受ける利益の配当、剰余金の分配、基金利息並びに投資信託(公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託を除きます)及び特定目的信託の収益の分配にかかる所得をいいます。法人の株主(出資者)が株主の立場で受ける利益の分配を配当所得というのですから、株主の地位の基づく経済的な利益であっても、法人の利益の有無にかかわらず供与される株主優待乗車券や株主優待施設利用権などは、配当所得に含まれないことになります。
そして、所得税法では、配当所得は20%の税率による所得税の源泉徴収を行なった後、他の所得と合算して課税する総合課税を建前としておりますが、租税特別措置法により、次のような源泉分離選択課税などが設けられているほか、証券投資信託(公社債投資信託等の利子所得に該当するものを除きます)の収益の分配については、利子所得並みの一律源泉分離課税の制度が採用されております。
なお、配当所得は、利子所得と異なり、その年中の配当等の収入金額から元本たる株式等の取得に要した負債の利子を控除して計算します。
1 源泉分離選択課税
株式の配当等について源泉分離課税を選択した場合には、35%の税率により源泉徴収が行なわれ、これで所得税の納税が完了し確定申告の必要はありません(住民税は総合課税の対象となります)。ただし、1回に支払を受ける金額が25万円(配当金の計算期間が1年以上の場合は50万円)以上の配当金、又は持株比率5%以上の株式を有するものが受ける配当金は、源泉分離課税の選択をすることはできません。
なお、源泉分離課税を選択した配当所得については、配当控除が適用できませんし、負債利子控除もできません。
2 少額配当の申告不要制度
1回に支払われる金額が5万円(配当金の計算期間が1年以上の場合は10万円)以下の配当所得については、他の所得と総合して確定申告をする必要がありません。したがって、確定申告をしない限り、20%の税率による源泉分離課税と同じ結果になりますが、源泉分離課税と異なって、所得税の実効税率が20%未満となるような人は、確定申告をすることによって、源泉徴収税額の一部が還付されることになります。
なお、この少額配当所得については、住民税は非課税とされます。
関連するコラム
-
2024.11.18
橋本 浩史
株主を賃貸人とし同族会社を賃借人とする不動産の賃貸借契約に所得税法157条1項(同族会社の行為計算否認規定)の適用の可否が争われた税務判決 ~大阪地方裁判所令和6年3月13日判決TAINS Z888-2668(控訴)~
1 はじめに 所得税法157条1項は、同族会社等の行為又は計算で、これを容認した場合にはその株主等で…
-
2024.10.20
山田 重則
固定資産税実務Q&A
<総論> Q 固定資産税の過大徴収はどの程度起きているか? Q 近年、新聞報道された過大徴収事案には…
-
2024.10.15
橋本 浩史
消費税法2条1項8号の「対価を得て行われる」(対価性)の意義が争われた税務判決 ~名古屋地方裁判所令和6年7月18日判決TAINS Z888-2624(控訴)~
1 はじめに 消費税法2条1項8号は、消費税の課税対象である「資産の譲渡等」とは、「事業として対価を…
-
2024.09.30
山田 重則
Q 近年、新聞報道された過大徴収事案にはどのようなものがあるか?
A 近年、新聞報道された主な過大徴収事案は、下表のとおりです。ここから読み取れることは、①過大徴収は…