国税OBが緊急寄稿!!所得税法は“生身の人間”を対象 金融・証券税制の改正について1
第32回 金融・証券税制の改正について
1 配当課税の見直し
証券税制は、昨年の6月以来、個人投資家を証券市場に参加しやすくするなどの観点から、上場株式等の譲渡益に対する課税を中心に、数次にわたって税制の見直しが行われました(詳細は第23回から第25回までを参照してください)。しかし、見直し後の証券税制は、優遇措置があるとはいえ、複雑で分かりにくいという批判がある上、株式市場も依然として低迷状態が続くところから、平成15年度の改正においても、次のような証券・金融税制の軽減・簡素化の措置が講じられます。
1 配当課税の見直し
現行の配当所得は、20%の税率による所得税の源泉徴収が行われた後、他の所得と合算して課税する総合課税を建前としておりますが、次表のとおり、源泉分離選択課税や少額配当の申告不要制度が設けられております。
源泉分離課税制度 少額配当の申告不要制度
1銘柄当たり1回25万
円(年1回配当の場合
は50万円)未満で、か
つ、発行済株式総数の5
%未満の配当 所得税は35%の税率
による源泉分離課税。
住民税は総合課税 1銘柄当たり1回5万
円(年1回配当の場合
は10万円)未満の配
当 所得税は20%の税率
による源泉徴収のみで
確定申告をしなくても
よい。
住民税は非課税
今回の改正では、平成15年4月1日以後に支払を受ける一定の上場株式等の配当について、源泉徴収税率が15%に軽減されるとともに、[1] 平成15年4月1日から同年12月31日までは10%、[2] 平成16年1月1日から平成20年3月31日までは7%の優遇税率が適用されます。そして、上場株式等に係る配当については、金額の多寡にかかわらず、原則として確定申告を要しないこととされます。ただし、発行済株式総数の5%以上を所有している大口株主は、税率の軽減や申告不要の適用がありません。
また、平成16年1月1日以後に支払を受ける一定の上場株式等の配当は、別途、[1] 平成16年1月1日から平成20年3月31日までは3%、[2] 平成21年1月1日以後は5%とする住民税の特別徴収制度が設けられます。
この結果、配当所得については、原則として、所得税や住民税の申告をしなくてもよいこととなりますが、総合課税の対象となる所得金額が少ない人などは、確定申告をして配当控除を適用することもできます。
なお、配当所得の源泉分離課税制度は廃止されます。
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