国税OBが緊急寄稿!!所得税法は“生身の人間”を対象 遺産分割と譲渡所得
第46回 遺産分割と譲渡所得
共同相続人が相続財産を分割する方法としては、現物分割、代償分割、換価分割及び共有とする方法等がありますが、遺産分割の方法によっては、次のとおり、譲渡所得として所得税が課税されることになります。
1 現物分割の方法による場合
現物分割とは相続財産を具体的な姿のまま分割する方法であり、分割を受ける財産は、他の相続人から取得するものではなく、分割を受けた相続人が被相続人から直接相続により承継するものですから(民法909条)、譲渡所得としての課税問題は生じません。
2 代償分割の方法による場合
代償分割とは、共同相続人のうちの一人又は数人が相続財産の現物を取得し、その者が他の共同相続人に対し金銭などを交付する債務を負担する方法です。代償分割によって財産を取得した相続人が債務の履行として金銭を交付した場合には、譲渡所得としての課税問題は生じません。しかし、その債務の履行として不動産等の所有権を移転した場合には、その移転に伴って債務が消滅するわけですから、資産の有償譲渡があったことになります。したがって、所有権が移転したときに、その資産の時価相当額の収入があったとして譲渡所得の課税が生じます。
3 換価分割の方法による場合
換価分割とは、相続財産を換価してその代金を相続人間で具体的な相続分に応じて配分する方法です。換価分割の方法によった場合、その換価代金の配分を受けた相続人は、相続により取得した相続財産に係る権利を譲渡したものと解されますから、その相続により取得した権利(割合)に応じて譲渡所得の課税が生じます。
4 共有とする方法
これは相続財産の全部又は一部を相続人間の共有にしておく方法ですから、相続人各人は、共有物の全部について共有持分に応じた権利を取得することになります。したがって、相続時には譲渡所得としての課税問題は生じませんが、その後、その共有物を分割した場合には、原則として、共有持分の交換(譲渡)があったものとして譲渡所得の課税問題が生じてきます。ただし、実務上は、共有に係る一の土地をその持分に応じて現物で分割した場合には、その土地の全体に及んでいた所有権が単独所有することになったその土地の部分に集約されたに過ぎないという点に着目して、分割による資産の譲渡はなかったものとして取扱うことにしております。
2003.8.28
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